広告は私たちに微笑みかける死体 (オリビエーロ トスカーニ (著), Oliviero Toscani (原著), 岡元 麻理恵 (翻訳)/紀伊國屋書店)

購入価格:752円
評価:
この記事は約2分31秒で読めます
モノを売らんかなとする態度を捨てて広告を作ると、どうして逆に顧客増やイメージアップというプラスに繋がっているのが非常に興味深い。仏教でいう執着を捨てたところに解脱があるかのような。
高度資本主義・消費社会の住人の多くがトスカーニの広告をはじめて見たときに、頭に浮かべるのは、「不幸」や「タブー」を売り物にし、「禁じ手」を使った「スキャンダラス」な「売名行為」ということだろう。事実、ヨーロッパ広告界の大物や多くのジャーナリスト、知識人と呼ばれる人たちは、「広告にあるまじき行為」「広告界の名誉を傷つける」「破廉恥で不道徳な行為」等々と不快感や怒りをあらわにし、一斉にトスカーニを非難。
ヴェネツィア・ビエンナーレについで、ローザンヌ、メキシコ、サンパウロにある現代アート美術館にも展示された。トスカーニの広告が、なぜすんなりと美術館にいけたのかを、フランスの作家・哲学者であるレジス・ドブレは以下のように説明している。
古典的な広告は、前衛広告よりも70年の遅れをとっている。現実をありのままに映し出したベネトンの広告はついにレディメイド(日用既製品をそのままオブジェとして提示した芸術作品)に追いついたのだ。芸術と人生の間の隔たり、映像と現実の間の隔たりをなくすこと、これが、マルセル・デュシャンに続くアーティストたち全員に対して我々がなすべきことである。
キリスト教をひとつの偉大な広告として解釈しているのは、アーティストとして、あるいはキリスト者として、深く考えさせられるものがある。
誰も十字架を焼く者はいない。十字架に小便をかける者もいない。人々は十字架を見れば、祈りを捧げるではないか。広告はこの事実を考慮すべきなのだ。 (中略) 広告はつねに、広告代理店「使徒たち」が築きあげたコミュニケーションのノウハウの上に成りたっている。絶えず普遍的なロゴマークとシンボルとを模索している。「互いに愛しあいなさい」と同じくらいシンプルで強烈な、スローガンを見いだすのに知恵を絞っている。
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
関連記事
ホラーハウス社会
2014/05/28 book-review book, migrated-from-shintaku.co
【この社会はいつもどこかに怪物が歩き回る社会なのだ。】 まー、その通り。そもそも ...
自分の「異常性」に気づかない人たち 病識と否認の心理
2021/03/18 book-review book, migrated-from-shintaku.co
たまに、自分が普通の仮面をかぶっているような気がして、常識人を演じているような気 ...
カーマ・スートラ (まんがで読破)
2018/02/16 book-review book, migrated-from-shintaku.co
古代インドの性愛指南、いわば四十八手的な本。日本人の価値観からすると歪みを感じる ...
Ninja: Ninja Warrior Fun Facts For Kids: Ninja Assassin History, Training, and Code
2017/05/31 book-review book, english, migrated-from-shintaku.co
最後は折り紙での手裏剣の作り方、Tシャツを用いた忍者マスクの作り方などが紹介され ...
日本史のなかのキリスト教
2017/10/27 book-review book, migrated-from-shintaku.co, religion
まあ、悪くはなかったが、どうも著者の煽りっぽい文体が気にさわる。キリスト信者はこ ...