虐待父がようやく死んだ (あらいぴろよ/竹書房)
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評価:
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親は選べないとはよく言ったものである。一読して思うのは、最悪。フィクションではないかとさえ思ってしまう。
親は鏡
どんな親でも、子にとって親は鏡である。子は親を通してこの世界のなんたるかを知るのであって、それが歪んでいたり割れていたりすれば、子もまたそのように受け取るのは必然である。反面教師云々といった美談にできるのは、その先の、物心ついてから、もっと、ずいぶんと大人になってからの話である。
誰かに選ばれるということは
私にものすごい快感を与えた
虐待されてきた彼女は、男性に告白された時にこう感じたという。マザー・テレサの言葉を思い出す。「必要とされないこと、 愛されないこと、気遣われないことが 最大の貧困」。なんにつけても、貧困は渇望を生む。
愛のかたち
よくよく考えれば、愛は怖い。いや、人の好意というもの自体、とても恐ろしい。形もない。証拠もない。補償もない。しかしそれでも我々は、愛なくしては生きていけない。愛なんてとうそぶくのも、愛を必要とするからこそだろう。愛の反対は憎しみではなく無関心だと喝破したのもまたマザー・テレサ、その人である。
愛してるなら信じさせてよ!
不安にさせないでよ~!
愛の有無の不安にかられた著者の叫びに対する彼の返しが秀逸である。「じゃあもっと…俺を信じてください」
それでも生きなければならない
この本は、とても胸に刺さるものがある。それは彼女の作画能力や構成力よりも、彼女自身の想いがのっているからではなかろうか。
今ある感情を過去や理想に繋げないだけで
こんなにラクになれるなんて…
不肖アーティストとして、「想い」なんて言葉を使うのはどうかしていると自分でも思う。そう、作品がすべてだ。想いなどというものは、いっそノイズだ。
凡百の作家は、この想いでもって作品を作り上げ、しかしその想いによって失敗する。想いは作家の目を曇らせるからだ。想いと冷徹な客観性が両立した時にだけ、佳作が生まれる。
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