虐待父がようやく死んだ (あらいぴろよ/竹書房)
購入価格:990円
評価:
この記事は約2分33秒で読めます
親は選べないとはよく言ったものである。一読して思うのは、最悪。フィクションではないかとさえ思ってしまう。
親は鏡
どんな親でも、子にとって親は鏡である。子は親を通してこの世界のなんたるかを知るのであって、それが歪んでいたり割れていたりすれば、子もまたそのように受け取るのは必然である。反面教師云々といった美談にできるのは、その先の、物心ついてから、もっと、ずいぶんと大人になってからの話である。
誰かに選ばれるということは
私にものすごい快感を与えた
虐待されてきた彼女は、男性に告白された時にこう感じたという。マザー・テレサの言葉を思い出す。「必要とされないこと、 愛されないこと、気遣われないことが 最大の貧困」。なんにつけても、貧困は渇望を生む。
愛のかたち
よくよく考えれば、愛は怖い。いや、人の好意というもの自体、とても恐ろしい。形もない。証拠もない。補償もない。しかしそれでも我々は、愛なくしては生きていけない。愛なんてとうそぶくのも、愛を必要とするからこそだろう。愛の反対は憎しみではなく無関心だと喝破したのもまたマザー・テレサ、その人である。
愛してるなら信じさせてよ!
不安にさせないでよ~!
愛の有無の不安にかられた著者の叫びに対する彼の返しが秀逸である。「じゃあもっと…俺を信じてください」
それでも生きなければならない
この本は、とても胸に刺さるものがある。それは彼女の作画能力や構成力よりも、彼女自身の想いがのっているからではなかろうか。
今ある感情を過去や理想に繋げないだけで
こんなにラクになれるなんて…
不肖アーティストとして、「想い」なんて言葉を使うのはどうかしていると自分でも思う。そう、作品がすべてだ。想いなどというものは、いっそノイズだ。
凡百の作家は、この想いでもって作品を作り上げ、しかしその想いによって失敗する。想いは作家の目を曇らせるからだ。想いと冷徹な客観性が両立した時にだけ、佳作が生まれる。
- 前の記事
- 菊と刀
- 次の記事
- 人工知能は人間を超えるか
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
関連記事
事故と災害の歴史館―“あの時”から何を学ぶか
2018/12/28 book-review book, migrated-from-shintaku.co
人間の歴史とは事故と災害の歴史に他ならないと痛感する一冊。どうしようもなくちっぽ ...
WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜
2019/07/29 book-review migrated-from-shintaku.co
いまだアメリカでホームレス以外に友達の一人もおらず、なんだか孤独だなあと思ってい ...
ディズニーランドという聖地
2013/01/19 book-review migrated-from-shintaku.co
私が二十歳そこらの大学時代であれば、山田かまちの死のように共感でき、あるいは尊敬 ...
99・9%は仮説~思いこみで判断しないための考え方~
2021/10/06 book-review book, migrated-from-shintaku.co
この世で一生懸命論じられている何もかもが、「いま現在はとりあえずそのように信じら ...
必ずわかる! 「○○(マルマル)主義」事典
2013/08/24 book-review book, migrated-from-shintaku.co
犯行の様子を淡々と、理路整然と語る犯人は、しかし知能指数は高い。知能とその行い( ...