コロナかもしれない人々は(3)海外帰国者、コロナの疑いにつき

  2020/11/09

シリーズ連載「コロナかもしれない人々は」
  1. 地元には帰れない
  2. 自力でレンタカーor自腹でホテル
  3. 海外帰国者、コロナの疑いにつき
  4. 真剣!体験!唾液しぼり
  5. コロナ容疑者、釈放される

宿泊拒否にあえば、また別のホテルを探さねばならない。面倒には違いないが、それはそれでおもしろい気もする。

半日とかからず届いた返信は、拍子抜けするものであった。海外からの帰国者は通常の宿泊客とは別フロアになること、滞在中の清掃やベッドメイキングは提供されず自身で行うことなど、いずれも拒否とはほど遠い。

それからはなんの障害もなく準備は整って、LAを発つ日を迎えた。

知人がLAX(ロサンゼルス国際空港)まで送ってくれるというので、空港近くのスポーツバーでアメリカでの最後の食事をとった。LAではいまだ飲食店内での食事は提供不可となっており、日本でいうテラス席のみ営業が許可されている。(現地時間2020年9月29日時点)

むろん、すべての飲食店にテラス席があるわけもない。そのため、店内のテーブルを外に引っ張り出したり、あるいはキャンプ用とおぼしき折りたたみ式のテーブルを用意してパラソルを立てたりと、急ごしらえのところも少なくない。基本的に雨が降らないカリフォルニアならではの施策であろう。

空港まで送り届けてもらい、友人らに礼を言って別れる。けっこうな確率で、この手の別れは今生の別れだったりすると思うが、悲しみも名残惜しさもない。むしろそのあっけらかんとした別れにこそ、人生の儚さを感じて悲しくなる。

荷物を預け、チェックインを済ませる。スーツケースが重量オーバーで100ドル前後の追加金を支払う。待合室に入って1時間弱で機内へと進む。

乗車率は6割程度といったところだろうか、機内は空いていた。私は窓際の席で、しかし隣は空席だったからトイレに立つのも楽で快適だった。機内食が二度ほどあったが、まもなく本物の安い日本食を食べられると思うと食べる気にはならなかった。

機内で常時のマスク着用が義務づけられている以外に変わったことはなく、およそ12時間で羽田に無事到着する。

飛行機に乗る時は、いつもこれが人生最後の日かもしれず、故に、もうこの世の雑事とはすべて手が切れると思って晴れ晴れとした気持ちになるので、何事もなく到着すると無理やり生き返らせられたようでがっかりする。

PCR検査の準備のため、しばらく機内で待機するようにとのアナウンスが流れる。とはいえ10分程度で降ろされて、空港内へと移動した。
参考: PCR検査/ポリメラーゼ連鎖反応(Wikipedia)

平常時の入国の流れとは違うルートに案内される。ひとつ目の部屋では、用紙が配られ記入を求められた。どこの国から来て、どこでこれから二週間の隔離期間を過ごすのか。また、滞在先までの移動手段は確保しているかどうか等々。

辺りを4、5人の担当官が歩き回っていて、書き終えた人から順に記入内容をチェックしてもらう。問題なければ次の部屋に進むのだが、ゲートがあって、手指の消毒を行うよう指示される。もうひとつ、足元に消毒液を噴霧する装置も設置してあり、同じく使うよう言われる。

それはちょうどスネのあたりに噴霧されるようになっていて、素直に解釈すれば、人体のうちで手指の次に不潔なのはスネだということである。これからはもっとしっかりスネを洗おうと思う。

(4)真剣!体験!唾液しぼりに続く

シリーズ連載「コロナかもしれない人々は」
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  2. 自力でレンタカーor自腹でホテル
  3. 海外帰国者、コロナの疑いにつき
  4. 真剣!体験!唾液しぼり
  5. コロナ容疑者、釈放される
新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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