コロナかもしれない人々は(1)地元には帰れない
2020/11/09
羽田空港を出て気がついた。ロサンゼルスから日本まで、一度も検温がなかったことに。
本帰国のための航空券をとったのは、2ヶ月前のことだった。コロナ禍でもすんなり買えて、436USD(約46,000円)と高くもない。2020年9月30日の深夜1:30LA発、羽田経由の広島着という条件も悪くなかった。
軒並み航空券は値上がりしていると聞いていたから意外だった。しかし最近の航空券の仕組みはブラックボックスもいいところで、同じ経路でも取り扱い会社によって万単位で値段が違うことも珍しくない。
ソーシャルディスタンスを保つために座席数が減らされているというのに、どうやって採算をとるのか、素人にはもはや想像もつかない。
とまれ、なんだかんだ普通に帰れることに安堵した。が、出発まで一月を切ったころ、以下の理由で広島までは帰れないことを知った。
水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)
全ての国または地域を出発し、日本に到着する航空機及び日本の港に入港する船舶に乗って来られた方については、検疫法に基づく隔離(入院)・停留が必要となる場合があるほか、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間の待機をお願いすることとなります。また、ご自宅等へは公共交通機関を使わず、ご家族やお勤めの会社等による送迎でのお帰りをお願いすることとなります。
加えて、入国した日の過去14日以内に入管法に基づく『入国拒否対象地域』に滞在歴のある方については、全員にPCR 検査が実施されます。
引用元: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html
この公共交通機関を使わずというのがくせもので、これには国内線の乗り継ぎも含まれるらしいのである。
正直、私はコロナも日本政府も舐め切っていた。まさか、そこまでのことではないだろう。きっと例外か何かあるはずだ。とりあえず、航空会社のJALに直接問い合わせてみることにした。
このたびは弊社便をご予約くださり、ありがとうございます。
現在、検疫体制の強化により、日本入国時にPCR検査が実施されております。
そのため、お知らせいただいたご旅程の場合、羽田到着時に検査が実施されます。
また、日本到着後14日間※は航空機、新幹線などの公共交通機関をご利用いただけないため、羽田到着当日に国内線便をご利用いただくことができません。
※入国した翌日から起算。
上述の対応は今後の状況により変更となる可能性もございます。
お手数をおかけいたしますが、ご出発が近づきましたら、あらためて最新情報を
厚生労働省ホームページにてご確認ください。
広島まで帰れないことは確実だった。もちろん状況が好転する可能性はあるが、そんな淡い期待にすがるほど若くも馬鹿でもない。実際、世界各地で感染者数はいまだ増え続けているし、地域によっては再度ロックダウンしようかというところさえある。
私は頭を抱えた。10月1日の夜には、広島でお好み焼きでも食べているものとばかり思っていたのだ。
シリーズ連載「コロナかもしれない人々は」広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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