観光アート (山口裕美/光文社)

書籍観光アート(山口裕美/光文社)」の表紙画像

購入価格:463

評価:

この記事は約2分1秒で読めます

内容=著者の個人的な熱い主張5割、全国美術館ガイド5割。

そういう本である。観光アートと銘打っているので、何やら新しい概念かと思ったが、要は最近ことに活発になってきた地方発のビエンナーレトリエンナーレは一見の価値あり。地方の美術館で異例の観客動員数を叩きだす美術館も増えている。時間とお金をかけて行く価値あり。これで地域活性、町おこし、アートの力ここにあり、というような内容である。

具体的な成功例として、香川県の直島、「大地の盛り芸術祭」越後妻有アートトリエンナーレ、美術館では金沢21世紀美術館など。地方ならではの自然とアートが一体となって、五感をフルに使って楽しめる、とのこと。

著者いわく、成功の要諦は、地域住民を取り込むこと。最初は「アートなんてよくわからんもんはいらん」という感じで否定的だった住民を根気よく説得することで、いまではすっかり協力者になってくれているという。

予算はなくともおもしろいことができます、地域の既存インフラを活かして、地域の特色を活かして、もっと、アートで、活性化! ということである。

なんか解説が繰り返しになってきたので、もうとにかくは本文より興味深かった箇所を以下抜粋。

【「Cool Japan」という言葉は、2002年にアメリカの外交誌「フォーリン・ポリシー」誌に掲載された論文で、ダグラス・マッグレイというジャーナリストが初めて使った~中略~彼はGNP(Gross National Product)になぞらえて、GNC(Gross National Cool)、つまり「国民総クール指数」という言葉を作り~中略~】

(全国の美術館に対しての著者の主張)
【美術館は寄贈に対してもっと慎重になるべきだ、ということ。
ほとんど世間に知られていない地元作家が、膨大な数の作品を寄贈しているケースがそこかしこにあった。美術館の方には申し訳ないが、作品はきちんと吟味して購入を行うべきである。寄贈という言葉に甘えて、所蔵庫がそうした作品でいっぱいになるのは納得がいかない。】

引用終わり。

著者の寄贈についての主張は納得である。それこそ日本人的発想で「どうも寄贈なんてしてくださってありがとうございます」とただただお礼を述べるばかりになっちゃいがちなんだけれども、そこは、うちのコレクションの方針とは違うので等、お茶を濁してでも断る勇気が必要なのだろう。美術館の役目として「価値あるものを後世に残す」ということがあるが、価値がないものは残さない、という割り切った態度もまた重要だろう。それに、所蔵庫に眠らせておくのも決してタダではない。その分、新進の価値ある若手作家の所蔵スペースが圧迫されている可能性だって十分にあり得るのだから。

記事カテゴリー: art

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

日本絵画のあそび

全編に渡って実に興味深かった。 【本来、日本語の書き文字はこの縦書きこそが正しい ...

プロ美術家になる!

黙って描け、ってことだ。 美術家になりたいなら必読。

アイ ラブ アート—現代美術の旗手12人

アメリカの心理学者ゴードン・オルポートの定義によると、「偏見とは十分な根拠もなし ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.