絵巻物に見る日本庶民生活誌 (宮元常一/中央公論新社)

書籍絵巻物に見る日本庶民生活誌(宮元常一/中央公論新社)」の表紙画像

購入価格: 不明

評価:

この記事は約2分14秒で読めます

タイトルのままの本である。十世紀ごろ〜江戸時代あたりまでの、日本の庶民のさまざまな風俗が紹介されている。興奮や感動はいっさいないが、老人の話をただ黙って聞いているような、へえ、そうか、ふうん、といった感じで、まあよく言えばなごむ本ではある。

私事で恐縮なのだが、この本で2012年に読んだ本はめでたく100冊目である。だからなんなんだという話だが、いやあ、よくはわからんが今年もいろんな本を読み漁って賢くなったなあ、おれ、という自画自賛で気分がよいことだけは確かである。

それはともかく、なごむなあという程度の本なので、どうも感想らしい感想がひねり出せない。

ので、さっそくいつものように本文よりかいつまんでご紹介。

【子供を裸のまま育てる風習は昭和二十年以前には僻地いたるところで見かけたもので、それは古くからの習俗であった】

【乞食を古くはカタイといったことは源順(みなもとのしたごう——引用者)の『和名抄』にも見えている。カタイということばは、不具者をカタワということとかかわりがあるかと思う。不具であり病を持つものが一般民衆社会のカタワラ(傍)におかれたことから、カタイともカタワともよばれたのではないかと思う。】

【作業をしていると、どうしても汗をかく。すると、片肌を脱いだり、両肌を脱いだり、ときには丸裸になる。中国人も朝鮮人も裸になることを嫌うけれども〜中略〜褌(たふさぎ=ふんどし——引用者)をしていることで裸になることにこだわらなかったのであろう。褌は着衣のうちと考えられていたからである。】

【昭和二十年以前には猪の大きさをはかるのに五足六足などといった。一頭の皮でくつが五足六足とれるという意味であった。】

【酒盛りには一つの盃を上座から下座へ順々に回して飲む風習があった。

酒を飲むにあたって、まず肴を食べる。〜中略〜肴を食べて酒を飲む。一つの盃が一順すると、つぎの盃が回される〜中略〜初めの盃で飲むことを初献、つぎを二献、以下三、四、五と続くのであるが、酒の肴を整えることを献立てといった。〜中略〜

しかし、回し杯(順の盃)で飲んでいるのでは、つぎの盃の回ってくるまでに酔いもいささかさめていく。そこで回し盃を中途で打ち切って、自分の膳なり高坏なりの上に置かれた皿や椀を盃に代用して酒を飲む風習が起こってきた。このくつろいだ酒の座を穏座(おんざ)といった。今日の酒盛りはほとんど穏座だけになっているが、それでもなお盃を交換したり、「お流れをちょうだいします」という挨拶の中に回し盃の名残をとどめているし、結婚式の折の三々九度の盃などにもおもかげを見ることができる。】

引用終わり。

そうか、現代の飲み方は「穏座」であったのか。今度からは「穏座で飲もう」などと言ってみたいものだと思う。穏座だけにオンザロックで飲もう、などとも言って失笑を買いたいものだとも、思う。なにはともあれ、飲んで、飲んで、飲みましょう。年末ですから。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした

読書会メンバーにお借りした本。まあ、こういう〈生きづらい性格〉のうえに、〈不運〉 ...

ソクラテスの弁明 (まんがで読破シリーズ)

漫画の楽しさに溺れ中。ソクラテスは単なる悪妻をもらった醜男かと思っていたが、馬鹿 ...

ディズニーランドという聖地

私が二十歳そこらの大学時代であれば、山田かまちの死のように共感でき、あるいは尊敬 ...

文系と理系はなぜ分かれたのか

同僚に借りた本。今の自分の関心ではなく、あまり刺さらなかったが、「儲かる理系・儲 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.