絵巻物に見る日本庶民生活誌 (宮元常一/中央公論新社)

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タイトルのままの本である。十世紀ごろ〜江戸時代あたりまでの、日本の庶民のさまざまな風俗が紹介されている。興奮や感動はいっさいないが、老人の話をただ黙って聞いているような、へえ、そうか、ふうん、といった感じで、まあよく言えばなごむ本ではある。

私事で恐縮なのだが、この本で2012年に読んだ本はめでたく100冊目である。だからなんなんだという話だが、いやあ、よくはわからんが今年もいろんな本を読み漁って賢くなったなあ、おれ、という自画自賛で気分がよいことだけは確かである。

それはともかく、なごむなあという程度の本なので、どうも感想らしい感想がひねり出せない。

ので、さっそくいつものように本文よりかいつまんでご紹介。

【子供を裸のまま育てる風習は昭和二十年以前には僻地いたるところで見かけたもので、それは古くからの習俗であった】

【乞食を古くはカタイといったことは源順(みなもとのしたごう——引用者)の『和名抄』にも見えている。カタイということばは、不具者をカタワということとかかわりがあるかと思う。不具であり病を持つものが一般民衆社会のカタワラ(傍)におかれたことから、カタイともカタワともよばれたのではないかと思う。】

【作業をしていると、どうしても汗をかく。すると、片肌を脱いだり、両肌を脱いだり、ときには丸裸になる。中国人も朝鮮人も裸になることを嫌うけれども〜中略〜褌(たふさぎ=ふんどし——引用者)をしていることで裸になることにこだわらなかったのであろう。褌は着衣のうちと考えられていたからである。】

【昭和二十年以前には猪の大きさをはかるのに五足六足などといった。一頭の皮でくつが五足六足とれるという意味であった。】

【酒盛りには一つの盃を上座から下座へ順々に回して飲む風習があった。

酒を飲むにあたって、まず肴を食べる。〜中略〜肴を食べて酒を飲む。一つの盃が一順すると、つぎの盃が回される〜中略〜初めの盃で飲むことを初献、つぎを二献、以下三、四、五と続くのであるが、酒の肴を整えることを献立てといった。〜中略〜

しかし、回し杯(順の盃)で飲んでいるのでは、つぎの盃の回ってくるまでに酔いもいささかさめていく。そこで回し盃を中途で打ち切って、自分の膳なり高坏なりの上に置かれた皿や椀を盃に代用して酒を飲む風習が起こってきた。このくつろいだ酒の座を穏座(おんざ)といった。今日の酒盛りはほとんど穏座だけになっているが、それでもなお盃を交換したり、「お流れをちょうだいします」という挨拶の中に回し盃の名残をとどめているし、結婚式の折の三々九度の盃などにもおもかげを見ることができる。】

引用終わり。

そうか、現代の飲み方は「穏座」であったのか。今度からは「穏座で飲もう」などと言ってみたいものだと思う。穏座だけにオンザロックで飲もう、などとも言って失笑を買いたいものだとも、思う。なにはともあれ、飲んで、飲んで、飲みましょう。年末ですから。

     

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