サービスの達人たち (野地 秩嘉/新潮社)
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達人という言葉にはどこか職人的なイメージがある。しかし「サービス」という無形のものを提供する達人となると、その人の生きざまのようなものがより強く立ち上がってくる。
これから先、いよいよモノが売れなくなると同時に、ますますサービスが重視されることを考えると、新しい偉人伝の形とも受け取れそうだ。
これはサービス業のプロたちの話です。でも、全体を通してみると、ここに書かれているのは都市なんです。モノ作りの職人さんたちは山奥でもひとりで仕事をすることができます。けれど、こうしたサービス業の人たちって人が大勢集まる都市空間でないと存在できないでしょう。サービス業のプロを描くということは都市を描く、都市に住む人たちのセンスを表現することだと思いました。
昭和の終わりから平成にかけてのバブル経済は都会の銭湯を淘汰した。銭湯を地上げすれば、まわりの商店や内風呂のない老朽アパートも一挙に落とせると考えた地上げ屋たちは都心の風呂屋を重点攻撃目標にし、札束で顔をひっぱたいて歩いた。
昭和41年の6月末、日本興行史上に残る大きなコンサートが日本武道館で開かれた。協同企画(当時、現キョードー東京)の代表、永島達司がリバプールからビートルズを呼んできたのだ。タレントが日本武道館をコンサート会場とするのも初めてなら、チケット販売を抽選にしたのも日本初。「一タレントの警備を公共機関である警察がやるとは何事か」と国会で論議が交わされたのも初めてなら、首都高速を封鎖して芸能人を送迎したのも空前絶後のことだった。
「電報」と言って玄関を開けさせ、突然、強盗に変身するという、通称「電報強盗」が出現。配達員たちは自分たちには何の罪もなくとも、意気消沈してしまった。督促のための電報は昭和58年、消費者金融を規制する法律が施行されてからぐっと減ってしまった。
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