糞尿譚 (火野 葦平/青空文庫)

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「ウンコはどこから来て、どこへ行くのか」の中で紹介されており、手にとった。まずタイトルがそのものずばりストレートでいい。
先の書籍の中で、ウンコはかつて立派な商品(肥料)として売買されていたが(芸術家の糞で知られる現代美術家のピエロ・マンゾーニもびっくり)、高度経済成長期あたりから、単なる汚物として無価値になっていったという予備知識があったので、よけいに興味深く、楽しめた。
小説とはあくまでもつくり話なのであるが、このウンコシッコの物語にはフィクション云々をかるく超えるリアリティがあり、小説というものの真骨頂を見せつけられた気持ちである。この作家、火野葦平はすごい。只者ではない。
一ヶ月勘定になっているので、僅かな汲取料金であるし、歩きさえすれば、すぐにでも集金は済みそうなものであったが、実際はそうではなかった。三べんも四へんも足を運ばせ、誰が居ないから判らないとか、今日は都合が悪いとか云った揚句、ようやく五度目位に、やっとくれるような家が何軒もあった。先月までは家族五人だったが、娘が一人このほど嫁に行ったから、十銭だけ引いてくれ、などといい、引かなければ他の汲取人に頼むからとすぐ云うので、仕方なしに割引したりする家も何軒かあった。
商売もあろうに糞の仕事のために家屋敷や田地田畠まで無くしてしまうなんて、これがほんとの糞馬鹿じゃな、と奥さんが云うのに、みんな大声を立てて笑った。
女のある家に赤い紙が落ちていたり、赤く染っていたりするのは当然のことですが、よく便所の中にサックが棄すててあるところがあります、料理屋や遊廓なんぞはあり勝なことですが、普通の家にあるのは、産児制限をやって居る証拠ですな、いろんな手紙だとか、へんな妙なものが棄ててあるのですが、便所の中へ棄ててさえおけば、誰も知らないと思っているのが面白いです
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