デュシャンは語る (マルセル デュシャン (著), ピエール カバンヌ (著), Marcel Duchamp (原著), Pierre Cabanne (原著), 岩佐 鉄男 (翻訳)/筑摩書房)

書籍デュシャンは語る(マルセル デュシャン  (著), ピエール カバンヌ (著), Marcel Duchamp (原著), Pierre Cabanne (原著), 岩佐 鉄男 (翻訳)/筑摩書房)」の表紙画像

購入価格:614

評価:

この記事は約2分45秒で読めます

今でこそ華の都のような扱いのニューヨークも、かつては信じられない悲惨な場所だったことがわかる。1964年の東京オリンピック以前の東京も、悪臭と不潔のただ中にあったことを考えると、都市の発生と汚穢おわいとは切っても切り離せないものなのかもしれない。

その時までにテネメントに住む住民の数は50万人に増えていたが、今なお、中国も含め世界のどこよりも人口密度がもっとも高い地区であるイーストサイド[マンハッタンの五番街から東の地区。貧困移民の居住区であった]では、当時、1平方マイル[2.59平方キロメートル]あたり29万人の割合で人が密集し、他に例を見ない状態だった。どの場所、どの時代の貪欲さも、同じ空間にその数の半分以上も集めることはできなかった。昔のロンドンの最大の密集地でも17万5816人の割合である。豚が主要な掃除夫であるかのように通りと側溝をうろつきまわっていた (中略) 1867年冬になってようやく、街の建物が密集した地区で、飼い主が豚を放し飼いすることが法令によって禁止された。

英語の「スラム」の動詞形には「(好奇心または慈善心から)スラム街を訪ねる、貧民街を見物する」という意味がある。この動詞形と「go slumming(スラム街見学へ行く)」という構文が生まれたのは1880年代初頭という。「この新しい動詞は、古い名詞形と同様、中産階級の側からの言葉であり、スラム街に対する新しい関係の仕方と態度を示していた。『スラム通いをする』ないし『スラミングに出かける』というのはスラム街で生活するのではなく、慈善を行うために、あるいはその後ますます盛んになるのだが、楽しみを求めて、あるいは自分たちとは異なる他の半分の人々の生活の様子を見る好奇心のために、スラム街を訪ねることを意味していた」

1842年、この悪名高いスラムを英国の作家ディケンズが訪れている。「ぐらぐら揺れる板の上を踏みはずさないように気をつけながら真っ暗な階段を上り、この狼の巣窟の中へ私と一緒に手さぐりで入ってみるがいい。ひと筋の光も、ひとそよぎの風も入って来そうにない」(ディケンズ、201頁)。「この悪徳と悲惨の世界はほかに何も見せるものなどないと言わんばかりだ。強盗や殺人でその名を知られた見るも恐ろしい安アパート。忌まわしい、崩れかかった、退廃したすべてのものがここにはある」。

記事カテゴリー: art

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

アートという戦場―ソーシャルアート入門

雑誌的だが、内容としてはバランスのいい本ではないかと思う。いろんなアートやってる ...

アートにとって価値とは何か

今の私にとって最大級の価値を持った本。最近親友にも言われたが、確かに、ミズマさん ...

芸術の陰謀―消費社会と現代アート

現代の美的判断の基準は、結局はどれほど高額かで決まる。現代美術とはそもそも『無価 ...

現代アート、超入門!

一般人の目線で現代アートを解説したいと最初にうたっているが、確かにその通りの内容 ...

反アート入門

入門とあるが、この内容をふだん芸術と縁遠い人間がどれだけ理解できるのかは疑問。や ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.