自伝でわかる現代アート (暮沢 剛巳/平凡社)
購入価格:500円
評価:
この記事は約2分27秒で読めます
内容云々のまえに、まずこの本をアマゾンで購入したのだが、いざ届いてみると画像のような状態であった。
つまり、"自炊"本である。おそらくアマゾンの商品の状態欄にきちんと記載されてあったであろうが、何も確認せずに値段だけ見て買ってしまったぼくのバカである。
というわけで、非常に読みにくかった。注意しないとつまづいたOLが書類をばらまくがごとく、ばっさあ、となってしまうのである。
しかし、内容は非常によい。おもしろい。興味深い。いい本だ、なのに、哀れ自炊で裁断され、バラバラ。それが、悲しい。電子書籍じゃねーよバカヤロー。
さて、ようやくで内容はといいますと、デザイン、建築家、芸術家など、八人の人物を取り上げ、その自伝から作品および時代を考察していくというような内容。
以下、本文より気ままに抜粋。
・かつて小林秀雄は「批評とは他者をダシにして自分自身を語ることだ」という主旨のことを語っていた。
(フランク・ロイド・ライトの自伝より)
・1914年8月15日、ただでさえ低迷していたライトに追い討ちをかけるような出来事が起こる。竣工間もないタリアセンが放火され、メイマと彼女の子供、事務所の所員など計七人が殺害されたのである。犯人は雇われて間もない黒人の使用人だった。犯人は事件を起こした直後に自殺を図って失敗し、逮捕されてからも取り調べに一切応じずに餓死してしまったため、真相は薮の中である。
※タリアセンはライトの自邸。メイマは妻。
(フランク・ロイド・ライトの自伝より)
・「建築家がもっとも建てたい建物は教会と別荘と美術館だ」
(マン・レイの自伝より)
・1957年にパリで開催された個展で「破壊されるべきオブジェ」が壊されたとき、犯人であった若者の起訴に断固として同意せず、「破壊できないオブジェ」とその名を変更した逸話は何にもまして象徴的である。デュシャンにも通底するこの姿勢は、まぎれもなくコンセプチュアルアートの先駆に位置している。
(マン・レイの自伝より:マン・レイに長年連れ添ったジュリエットの言葉)
・記憶にとどめることはたやすいことですが、忘れることはとてもむつかしいものです。そしてマン・レイは忘れられない人なのです。
以上
ほかにもいろいろと付箋を貼っていたのだが、やめた。
最近感傷的なので、ジュリエットの言葉に胸がうずいてしまったので。
忘れられない、こと、もの、ひと。
そういうものは誰にでもあるだろう。いまはもうそれらが自分の手の届かないところに行ってしまっていたとしても、悲しむことではない気がする。忘れられなくてもいい。
無数の記憶、あらゆるしがらみ、そういうすべてを引きずって、引きずり回して、後ろ髪を引かれて、ときに引き抜かれてハゲながらも生きていくのが、たぶん、人生というものだろう。
それはさておき、今年読了の本はこれが最後になるでしょう。来年もまた当ブログ、および新宅睦仁を何卒よろしくお願い申し上げます。来年も百冊は読みます。きっと。いや、必ず。では、良いお年を。
- 前の記事
- アウトサイダー・アート
- 次の記事
- 容疑者Xの献身
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡
2017/12/02 art book, migrated-from-shintaku.co
アーティストの成功、その人生の光と影をしみじみと思う。また、ウォーホルなんて知っ ...
誤解だらけの日本美術 デジタル復元が解き明かす「わびさび」
2018/04/28 art book, migrated-from-shintaku.co
kindle unlimitedに入ってたのでとりあえず読んでみたが、あまり得る ...