Chim↑Pom(チンポム)の行為について(2)

  2019/10/11

青い空に突如現れた飛行機がブーンブーンと舞って「ピカッ」と白く浮かぶ。

空は万人が見ることができる。3歳が見る10歳が見る15歳が見る二十歳が見る中年が見る老人が見る。無神経と言われ非難される理由の一つはそこだろう。見たくない人も見てしまった、という。

もちろん、わからなくもない。しかし男子たる者一歩外に出ればじゃないけれど、一歩外に出れば見たくないものでも目にしなければならないものだと思う。

少なくとも普通に生活していれば、ついさっきだって新宿駅前の横断歩道で「どかんかい!ぼけぇ!」と怒鳴りながらオッサンが歩いていた。誰もそんなやつは見たくない。でも出会ってしまうし見てしまうし脳みそが認識してしまう。

生きること=他者と出会うこと、異質な存在とぶつかることだと思う。かのブッダは王家の生まれだった。生まれた時に占い師に占ってもらったところこう言われたという。城の中、きれいなものだけを見て生きれば立派な跡継ぎ、つまり王様になるし、外に出て現実を見れば偉大な僧になるだろうと。ブッダの親はもちろん僧になんかして苦労させたくないので懸命にきれいな環境で至れり尽くせり育てた。

しかし青年になったある日ブッダは家来の者と外に出て、苦労して生きる人間や老いた人間、病んだ人間に死んだ人間をみる、すなわち生老病死である。

その話がなんだっていうんだって感じかもしれないけど、この世界に生きている以上、様々な人間がいて様々な思考が渦巻いている。ある意味僕らはそれらに飲み込まれつつ翻弄されつつ生きていかなければならないのだと思う。

で、たまたま彼らは自費でチャーターした飛行機で広島の上空にピカッと書きそれを芸術と呼び、しかしそれを見た広島の人たちは大激怒した。普段どんだけ厳選された風景を自分の眼球に映してるんだろう、なんて思ったりする。

ゲロまみれの酔っ払いに眉をひそめるのと、さして変わらぬ風景のような気がしたりする。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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