個展「コンビニ弁当の山-Time is money.」 ステートメント
コンビニ弁当は賞味期限を過ぎればゴミになる。たった1秒でも、である。言うまでもなく、食べ物はある一瞬間に腐って即有害となるわけではない。つまり、これは衛生の問題ではなく、経済の問題なのである。
たとえば、1秒後にはゴミとして捨てるものでも、しかし1秒前まではれっきとした商品であり資産ですらある。あるいは1秒後にはゴミとなり捨てられるものを、我々はその1秒前に金を払って買うのである。――Time is money. 時は金なりや。
- アーティストトーク
2016年11月26日(土)16:30-18:00 (入場・観覧無料)
- ゲスト:平野 到(埼玉県立近代美術館 主任学芸員)
- 交流会
同日 18:00-19:00 (入場・観覧無料)
- 本展と同時開催となる個展、片貝葉月「現代実用私的装置展覧会」、染谷浩司「収穫祭」の両作家も在廊いたします。ぜひ来場ください。
- アクセス
- 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館1F Google Map
渋谷駅(JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン/東急東横線・田園都市線/京王井の頭線/東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線)ハチ公改札口より徒歩8分
トーキョーワンダーサイト webサイト
『コンビニ弁当の山-Time is money.』についての講評
経済が最優先される日本では、日常に紛れた闇の部分で負の出来事が進行する。その一つが食品廃棄だ。美術大学だけでなく、調理師学校にも通った経歴のある新宅は、この問題を制作のテーマにしている。
新宅の試算によれば、全国の某コンビニエンスストアが賞味期限切れで廃棄する弁当は、一日に51万食(2億5500万円)にも達すると言う。驚くべき数字だ。この事実に私自身が衝撃を受けたことを、まずは正直に告白したい。
このテーマは、美術の分野で如何に表現し得るのか。展示では廃棄される「コンビニ弁当」に着眼しつつ、コンセプチュアルなアプローチと絵画表現が併用されていた。作家の素質なのか、作品の構成要素は慎重に吟味され、テーマに綿密に関連づけられている。時計は賞味期限を暗示し、レジのバーコードリーダー音が時報のごとく時を刻む。また、廃棄食品の山の稜線は国内総生産(GDP)の推移を示し、パネルの側面はコンビニの三色のシンボルカラーで彩られている。
コンセプトの整合性が見事である一方、ロジックを越境する表情を湛えていたのが、描かれた廃棄食品のイメージではなかろうか。確かに、これらの絵画の造形は美学的要請というより、その色彩や形態は流通する食品(揚物、スパゲティ、弁当仕切りのバランなど)に依拠している。即ち、審美的表現とは一線を画する絵画なのだ。にもかかわらず、食品を即物的(オブジェクティヴ)に描写した絵画は異様なイメージを放ち、シュルレアリスムにも通じる名状し難い余韻を残していた。消費社会の食料品をシニカルに描くアンディ・ウォーホルのキャンベルスープ缶などとは全く異なる、作者独自の視線である。
平野 到(埼玉県立近代美術館 学芸主幹)
「TWS-Emerging 2016」のプログラムの一環として執筆いただきました。
新宅睦仁個展「コンビニ弁当の山-Time is money.」の展示風景
©Tokyo Wonder Site Photo: 加藤健
作品詳細
コンビニ弁当の山-Time is money.2016年
・絵画部分:パネルにアクリル、時計ムーブメント、時計針、単三電池 / 各30×30(cm) 全80点、サイズ可変
・音声部分:パワーアンプ、ラウドスピーカー×4台、MP3プレーヤー
※インスタレーションでの使用楽曲「register dream」 視聴はこちら(soundcloud) 楽曲制作 © Hitoshi Koide
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