フリーター、野宿者、そして衰退する日本(3)

  2017/08/22

どうもどうも、土日はゆっくり休ませていただきました、新宅です。しかしちょっと休み過ぎたような気もするので、今日は4時に起床し1時間制作からのランニングと、現時点ですでに完全燃焼の感があります。

それはともかくお待たせいたしました。ようやく最終章です。

その3.「われわれの未来に野宿者(ホームレス)が及ぼす影響」

ニーチェは乞食についてこう言っている。

乞食は一掃すべきである。けだし何か恵むのもしゃくにさわるし、何もやらないのも、しゃくにさわるから

そのアンビバレンスな感情は、国家の心情を代弁しているかのようで興味深い。

願わくば汚くて臭い目障りなホームレスなど消えて無くなってほしいのだが、しかし、ホームレスが消えて無くなることはない。

画像はホームレスの実態を表す一例、のつもり。撮影場所は新宿の都庁付近。一枚目は放置されたホームレスの荷物、二枚目はほとんど写っていないのだが、路上で堂々と、水を張った鍋をカセットコンロの火にかけ、お湯をわかしてカップラーメンを食べようとしているホームレス男性、である。

厚生労働省の2010年の発表によると日本全国にホームレスは1万3000人あまりだそうである。しかしもちろんその数は実際に調査で確認できた数でしかなく、たとえば女性のホームレスなどはほんとうにひっそりと公園の茂みの中などで隠れて生活している人が多く、実際はそれよりも多いことは確実だろう。

また、ホームレスの予備軍に至っては膨大である。その筆頭はフリーター、つまり非正規雇用と言われる人たちである。

確かにどんな大企業でもいつ潰れるかわからないこの時代に、フリーターをそのままホームレス予備軍とするのは性急に過ぎるかもしれない。正規雇用も非正規雇用も現代日本社会を生きるリスクは同じだと。しかしどんな企業も何の前触れもなくある日突然に潰れることは稀であり、経営が傾いた際にはまずコスト削減を行い企業の存続が図られるのが当然なのである。そして基本的な方法は人員整理、リストラである。

その時真っ先に切られるのは当然のごとく非正規雇用の人たちである。言い換えれば、経済状況の影響を真っ先に受けるのがその人たちである。

現在日本には400万ともいわれるフリーターが存在する。そして2012年5月の失業率は4.3%である。つまり、フリーターの人たちが完全にその失業率を反映しているとすれば、現在仕事がないフリーターが17万人程度いるということになる。そしてその17万人こそ、ホームレス予備軍の最前線に、好むと好まざるとに関わらず立たされている人たちなのだ。

フリーターかつ失業中で、いつまでも仕事が見つからないとしよう。するとまず雇用保険(失業保険)が切れ、それから貯金が切れる。

それでも受け皿となる家族があり、実家に住まうことでなんとかなるならいい。実家住まいであれば、寝床と食い物には困らないだろう。同居自体が、もっとも信頼できる経済援助なのである。

しかしほんとうの問題は、最大の支援者である親の世代が死んでゆく、10年後や20年後である。そのとき、失業はいとも簡単にイコールでホームレスとなり得るのだ。

先の流れで、雇用保険が切れれば、貯金しかない。しかし低賃金で働いてきた多くのフリーターの貯蓄では数ヶ月の生活を持続するのがせいぜいだろう。どうにか働こうにも、親世代が亡くなるような年齢と言えば40〜50代である。そう、非常に再就職が難しい年齢である。しかも長年フリーターで単純労働もしくはそれに準ずる仕事に甘んじてきたため、職能や資格のようなものも無い。となると、再就職はほとんど絶望的だと言ってもよく、運よく職にありついたとして、そうとうの低賃金は覚悟しなければならない。そうしてその賃金が、生活保護費を下回ることも多々あり得るのである。

単純に考えれば、それは大変だからもっと社会福祉の充実を、ということになるが、しかし話はそう簡単ではない。仮にすべての人に生活保護費を支給したとしても、それで根本的に問題が解決するわけではない。

社会福祉には言うまでもなく税金が使われる。税金が無限にあるならいいが、周知のとおり少子化問題や長引く経済停滞からも税収は下がる一方である。最近消費税の増税が決まったが、それでも税収は横ばい、もしくは消費が冷え込みむしろ税収減になるのではないかとさえ言われている。そうした状況で、どうやってこの先ますます増加していくだろう生活保護を必要とするようなレベルにまで落ち込んでしまった人たちを支えていくのか。

先のマッチポンプの話ではないが、ここでもある種の負の循環が発生する。

……予定より長くなったので、また明日につづく。明日こそほんとうの最終回、の予定。

▼関連記事

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

感情の不明

2009/02/13   エッセイ

なんか最近よく感じていることがある。 下ネタではない。 パソコンに最初から入って ...

戦争は始まり続け終わらない

2009/02/27   エッセイ

朝からなんだか怖ろしくなってしまった。 画像は全身に毒ガスを浴びた人の足。DAY ...

その人と作品は別もの(ゲスにファンキー、不倫報道で叩かれる歌々について)

今年に入って芸能人の不倫報道が相次いでいる。ここまでくると皆なにがしかのやましさ ...

かつて男の子だった

2012/06/26   エッセイ, 日常

画像は昨日の中華料理の実習のチンジャオロースー。 というのも、来月あるテストはピ ...

思い出しては、

そうめんの匂いがした。いや、そうめんに匂いらしい匂いもないから、まあ、そうめんの ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.