独学の精神 (前田英樹/筑摩書房)

購入価格:325円
評価:
この記事は約2分43秒で読めます
くら寿司のアメリカ店舗「KULA」や、海外のDAISOについてのくだりは、しみじみと悲しくなる。あれもこれも、100円なのは日本だけ。初めこそ私も向こうが高いのだと思って暮らしていたが、帰国してみると、あらためて日本が危機的に安過ぎるだけなのだということを痛感。
日本は戦後ずっと、「生き残るには価格競争しかない」という状況が続いてきた。 他の誰もがやらないことに特化して「オンリーワン」で勝負する欧米企業に対して、日本企業は品質や性能、領域のユニークさで競うことができず、安さで勝負をする傾向があるためだ。
アメリカ人件費、5年で2割増
気になる海外での価格だが、アメリカは2.6ドル~3ドル(約270~約310円)、台湾は38台湾ドル(約140円)で、やはりいずれも日本の100円よりも高い。「もちろん現地の競合店よりはだいぶ安くしている。それでもやっぱり人件費が高すぎて、日本よりは高くせざるを得ない」(田中社長)という。「アメリカでは魚はあまり食べられないので安く、コメも安い。つまり原材料は安いが人件費と家賃が日本より桁違いに高い」
高級車の組み立て工場における生産性(1台あたりの組み立て時間)は日本が約17時間でアメリカは約33~38時間、ヨーロッパは約37~111時間とされていた。 それでもドイツの生産性が高いと言われる所以は、価格にあったのだという。自動車など多くのモノが、日本よりも高い。(中略) 「ヨーロッパで5倍の時間をかけて作った車も3倍の価格で売れば、金額の生産性は2倍になる。それこそがドイツの生産性の高さの理由だった」と分析する。特にドイツは「需要が低いときでも絶対にもうかるように」と、需要変動のボトムに合わせた生産能力で生産設備を持つ。そのため、例えば自動車ならデイーラーに行くと「納期は半年後」と言われることもよくある。だが自動車に限らずドイツ製品はブランドで差別化されているので、多少の価格差で消費者が他ブランドに流れることは少ないという。つまり、市場で欠品しても消費者は待つしか選択肢がないのだった。一方で、日本は欠品しないように需要変動のピークに合わせて生産能力を持つため、需要が落ち込んだときに値下げをしてしまう。「日本の生産性が低いという理由の一つは、日本の価格付けの『安さ』にある」
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
関連記事
近代秀歌
2015/12/19 book-review book, migrated-from-shintaku.co
読み終わってると思ってたら読んでなかった。なかなかよい本。土屋文明の『終りなき時 ...
冷酷 座間9人殺害事件
2021/04/19 book-review book, migrated-from-shintaku.co
犯行の様子を淡々と、理路整然と語る犯人は、しかし知能指数は高い。知能とその行い( ...
人工知能は人間を超えるか
2020/08/13 book-review book, migrated-from-shintaku.co
WEBデザイナーという職業柄、AIに職を奪われる云々はよく話題になる。しかし、ど ...
若き数学者のアメリカ
2019/01/30 book-review book, migrated-from-shintaku.co
本書に出てくる「急性愛国病」という言葉を別の本で読み、興味がわいたことから手に取 ...