サピエンス全史(上・下)文明の構造と人類の幸福 (ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳)/河出書房新社)

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本書の続編に位置づけられる「ホモ・デウス」を先に読んでいたが、これまた人間やめたくなること必至な名著である。

今まで到底気づけなかった視点が得られ、これからを生きる指針になる。――本書を当たり障りなく評すればそのようなところだろうが、私としては、このどうしようもない人間なる存在、それを嫌気が指すほど見せつけられたという思いの方が強い。

意味なく生きれないし死ねない人間

人間は虚構を作り出したことによって、現在の繁栄があるのだという。宗教、神もまたそんな虚構の傑作のひとつだが、中でも金銭は人間の作り出した虚構の最たるものである。

この虚構のもとにあってはじめて、人間は簡単に、強力に結びつくことができる。

ヴォルテールは神についてこう言っている。「神などいないが、私の召使いには教えないでくれ。さもないと、彼に夜中に殺されかねないから。」

お金がもらえないなら、誰も会社なんかには行かない。逆に言えば、お金さえもらえれば、人は嫌なことでも抵抗感があっても耐え難い苦痛でさえも、なんでもする。

考えてみてほしい。このようなことを、仮に金銭の介在なしに行うにはどうすればいいのだろうか。それも、思想も出自も何もかもが異なる、千人、万人、億人単位の人々を、である。

実際、どんな偉大な宗教でも無理だろう。現代、金銭以上に強力な宗教はない。

無知の知の意味

自分が知らないことを知っている――あまりにも有名なソクラテスの無知の知であるが、この重要さを本当の意味で理解している人は少ないのではないだろうか。

近代の「探検と征服」の精神構造は、世界地図の発展に照らして考えればよくわかる。〜中略〜よく知らない地域はただ省略したり、あるいは、空想の怪物や驚くべき事物で満たしたりされた。

聖書はかつて現代のGoogleと同義であった。そこには一切の漏れなく、この世のあらゆる叡智と真理が網羅的に記されている。ゆえに、とにもかくにも聖書を学びさえすればよかった。

いま、確かに人々はGoogleを信じ、崇めてさえいるようなところがあるが、それでもこの世はGoogleがすべてだと言うような愚かな人は稀だろう

そう、これこそ無知の知であって、現代、まともな教育を受けた人であれば、知らないこと、わからないことがいまだ山ほどあることを知っている

好きで人間に生まれたわけじゃない

人間は罪深いと思う。現に、人間ほど暴虐の限りを尽くしてきた生物もいない。虫も殺せないあの人も、いつも微笑みを絶やさぬあの人も、誰もかれも、人間に生まれついた時点でつくづく業が深いのだと、私は思う。

自ら神にのし上がった私たちが責任を取らなければならない相手はいない。その結果、私たちは仲間の動物たちや周囲の生態系を悲惨な目に遭わせ、自分自身の快適さや楽しみ以外はほとんど追い求めないが、それでもけっして満足できずにいる。自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?

誤解を恐れずに言えば、私はこの本を聖書だと思う。

注意深く読み進めれば、間違いなく人間に戦慄する。絶望する。だって、救いようがない。

しかし現代、すべての人はここから出発しなければならないと思うのだ。つまりスタート地点としての聖書なのである。

     

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