中・高校生のための現代美術入門 (本江邦夫/平凡社)
購入価格:900円
評価:
この記事は約2分5秒で読めます
なんか、世間ではわかりやすいと評判のよいらしい本なのだが、どうして、そんなにいいとは思えなかった。
著者はできるかぎり噛み砕いて、それこそタイトル通り「中・高校生」にもわかるように書いたらしいのだが、そして事実そうなのだろうが、やはりわかりにくいと思ってしまった。
たぶん、こんなことを言うと身も蓋もないのかもしれないが、現代アートはもう、作家と評論家、そして一部の熱心なアートファンでもなければ実感として理解し楽しめないところにまできてしまっているのではないだろうか。
たとえとしてはおかしいかもしれないが、オリンピックの水泳において、剃毛したり、水の抵抗云々で水着が問題になったりするが、それと同じで、もはや一般人には、自身の中にある感覚の延長や想像力を働かせるというようなことでは理解のできない、我々がふつう経験する水泳とは似て非なる競技になってしまっているのではないだろうか。
ま、そんな仰々しい問題提起はさておき、作家のわたしにとっては興味深かった記述を覚え書きとして以下にご紹介。
・アド・ラインハートの言葉
「芸術とは、芸術ではないのものではないものである(Art is not what is not)」
正三角形といえば、ふつう思い出されるのはキリスト教でいう三位一体(父、子、聖霊)で、その中に目をひとつ描けば、それはそのまま神の臨在を示すイメージでした。三角形の立体版、四面体は、とくに19世紀の秘密結社のあいだで注目されたものです。
・ウォーホルのブリロボックスでアートの定義がわからなくなった哲学者のアーサー・ダントの論
(それが芸術であるかどうかを)決めるのは、ただのものでも作品でもない、それらを取り囲む状況、つまりダント自身のいう「芸術界」(art world)、具体的には、有力な画商、影響力のある評論家、キュレーター(学芸員)、強力なコレクターなのではないかということです。
・ジョゼフ・コスースの言葉
「芸術とは芸術の定義である」
・フランク・ステラの言葉
「あなたのみているものは、あなたのみているものである(what you see is what you see.)」
以上。
ステラの言葉はミニマル・アートを語るときにかならず引き合いに出される有名な言葉だそうなのだが、いや、ごめん、知らなかったし、どういう意味?
アートをわけわかんねーと言ってる人の気持ちはよくわかる。というか、そりゃそうだ。芸術家はおまえの頭にある価値観か既成概念をひっくり返そうとしてんだから、当たり前といえば当たり前の話。漫才師が客を笑わしたのと同じ。おありがとうござ〜い。
- 前の記事
- 日本の現代アートをみる
- 次の記事
- 人身売買
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
色彩がわかれば絵画がわかる
2014/05/31 art book, migrated-from-shintaku.co
色彩感覚がないので、意識して、計算して色を使わないとならないと思う私である。いま ...
描く・見る・知る・画材を選ぶ 水彩ハンドブック
2012/11/07 art migrated-from-shintaku.co
アクリルから透明水彩に画材を変えようと思い立ち、まずは基本から入る性格のために手 ...
わかりたいあなたのための現代美術・入門
2014/01/14 art migrated-from-shintaku.co
なかなかよかった。 読んで損はない本です。 「オールオーバーな絵画が画面から消そ ...