アート・リテラシー入門—自分の言葉でアートを語る (フィルムアート社 (編集), プラクティカネットワーク (編集)/フィルムアート社)
購入価格:699円
評価:
この記事は約2分54秒で読めます
写真でなくても、映像でなくても、何百年も前から、プリミティブな絵で、彫刻で、黒人をはじめとするバイアス、偏見があったことがわかる素晴らしい一冊。そして、そのレイシズムは今も連綿と続いている、という負の歴史。
呪術や宗教の起源でもある「誓い」の言葉が、反対に「呪い」にも転倒しうることとも関係している。実際、たとえば英語で「信仰」を意味する「デヴォーションdevotion」の語源となったラテン語の「デウォーティオdevotio」には、「祈願」と「呪詛」の両方の意味がある。「神聖な、神に捧げられた」を意味するラテン語の「サケル」にもまた、反対に「呪われた」という意味がある。つまり、「祝福の言葉としての誓いと、呪詛の言葉としての呪いとは、同じ言語活動の出来事のうちに、同じ起源をもつものとして内包されているのである」。 (中略) 原始語のなかには、正反対の意味を同時にもつものが少なからずあることは、精神分析の生みの親フロイトもまたお気に入りのテーマであった。 そもそも、ラテン語の「宗教religio」という語からして、「敬虔」の意味もあれば、逆に、「瀆神」や「背信」の意味もある。両者は表裏一体であり、紙一重でもある。これはまた、「レリギオー」つまり「宗教」という語が、「結びつける」という意味の「レリゴーreligo」にも、逆に、「遠ざける」という意味の「レレゴーrelego」にも近いことと関係しているかもしれない。
いずれにしても、キリスト教はその始まりから、「奴隷」という身分にたいして、むしろ両義的な立場をとってきたように思われる。キリスト教における普遍主義とは、つまるところ、自分たちの一定の優位を担保したうえで成立してきたものに他ならない、といううがった見方もあるほどだ。あえて通俗的な言い方を使うなら、「上から目線」ということだろうか。
エジプトを「淫行」や「姦淫」や「不貞」のはびこる土地とみなすステレオタイプの偏見は、すでに旧約聖書の「エゼキエル書」(23章)でことさら強調されているから、まんざらありえなくもないだろう。いわゆる「オリエンタリズム」の遠い起源はこんなところにもありそうだ。
すなわちシバの女王にせよ、アンドロメダにせよ、クレオパトラにせよ、西洋絵画のなかで飽くことなく脱色され漂白されてきたのは、いずれも女性のキャラクターだ、という点である。このことは、繰り返しを恐れずにいうなら、レイシズムがセクシズムとも結託してきたことの証左となるだろう。黒い肌の女性は、二重のくびきを負わされてきたのである。
- 前の記事
- なぜ、これがアートなの?
- 次の記事
- ギリシア悲劇入門
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
関連記事
ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡
2017/12/02 art book, migrated-from-shintaku.co
アーティストの成功、その人生の光と影をしみじみと思う。また、ウォーホルなんて知っ ...
ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読
2014/07/08 art book, migrated-from-shintaku.co
読むべき本だろーなーと思いつつ長らく流していたのをようやく読んだ。読み始めてすぐ ...
フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命
2014/04/05 art migrated-from-shintaku.co
なんか最近、本が悪いのか私の頭が悪いのか、内容が全然頭に入ってこない。あっそ、あ ...