トム・ソーヤーの冒険 (マーク・トウェイン(著) 大久保 康雄(翻訳)/新潮社)

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言うまでもなく中国ではKanjiキャラクターが使われているので、嫌でも親しみがわく。いやいや、全然わかないという人は、ちょっと偏見が強すぎるので改めたほうがいい。

むろん、漢字の読み方はまったくといっていいほど異なるが、文字と音とを、わけもわからないながらも学んでいくと、はからずも日本語との共通点を見つけたりして、地味におもしろいものである。

「支那」というのはいったいどうしてできたなまえかといいますと、秦の始皇帝が全国を統一し、その威武は国の内外に及び、外国人は「秦」をなまって「支那」といった(大漢和辞典)ともいわれますが、また中国の学僧蘇曼殊は、時代的に見てそれは誤りで、紀元前千四百年ごろの印度の古詩の中に、中国をさして「チナ」という名称が使われており、それが仏典の中にしばしば用いられ、中国の呼称になったのだ、というのです。仏典の中には「至那」「脂那」「支那」と書かれてあり、これはインド人がそのように呼んでいるのを中国人が音を写して書いたもので、いずれにしても「支那」という名称の起こりはインドで、それを転写したのが中国人自身でした。英語のChinaも同様の経路でできたことばです。

中国の標準語には、清音と半濁音だけで、「ばびぶべぼ」というような濁音はないのです。古代の中国語にはありましたが、いまでは方言にすこし残っているだけです。た中国語に濁音がないということが、中国語の発音に澄み切ったきれいさをもたせている一つの理由でしょう。ですから、中国人には、「ばびぶべぼ」「がぎぐげご」といった音はにがてなのです。

「都度」は「つど」と読み、「そのたびごとに……」の意味ですが、「都」と「度」と書いてなぜ「そのたびごとに」となるのでしょうか。ここにも中国語があったのです。“都”は(トゥdu)音が「ッ」になったもの、そして“都”の意味は「すべて、それぞれ」という中国語なのです。ですから、「都度」と書いて「そのたびごとに」となるしだいです。 (中略) 「椅子」「帽子」なども中国語で、これもあまりにも日本語化されたのでふしぎに思う余地さえないのです。どちらも“椅”“帽”で意味は足りているのですが、二音節語にするばあいに、接尾詞として“子”が慣用されて、“椅子”“帽子”となったものです。

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