ぼくが韓国へ行けた理由(わけ)

  2020/08/24

昨日は画像の通りのカレーを新宿で食べてみた。まあまあおいしかった。というか、なんでカレー屋のカレーはジャガイモとかニンジンが入ってないんだ? そしてなんでそれらを入れたカレーのことをわざわざ「野菜カレー」などと呼ぶんだ? 野菜が入ってるのは当たり前だろ! 何にも入ってないカレーをカレーソースなんて呼ぶからおかしなことになるんだよ! ちゃんとカレー作れ! と心の中で叫んではみたものの、世の中はそのようになっているようなのであきらめて先へ進む。

なんだか疲れていたので、1日1ゲームの掟を破り、その疲れに無抵抗のままに20時前には寝た。そして2時半に起きた。絵の制作2ゲーム、そしてランニングして今に至る。もうすでにぼくの一日は完成したので、あとは好きに過ごすことにする。家には限りなく気楽な男がつらいよがぽつねんと待っている。

それはともかく韓国のお話です。なんか気分が変わったので流そうとしたのですが、優しい愛のあるクラスメイトが片手で数えられるくらいの人は続き期待してるよとfacebookでコメントをくれたので、あたい、書きます。というか、よくよく考えたらそのコメント自体はけっこうな鞭だったりする。

なんの話かわからないという人はひとつ前の記事の「ときめいて秋めいて芸術めいて」を読んでから、以下を読んでネ。

ネ、という表現。これは日本全国の愛ある母親の証である。冷蔵庫におやつがあるからネ、と書くような母親は、総じて立派なお母さんであると勝手に思っている。で、万年補欠のぼくが韓国へ行けたのも、そのようなお母さんの愛のおかげなのであった。

クラブチームの韓国行きが決まったのち、保護者と監督らで懇親会があった。その懇親会で、ぼくのお母さんは言った。「自費でいいので行かせてください!息子にいろんなことを経験させてやりたいんです!」とかなんとか、頼み込んだそうである。

今、こう書いててなぜだか一瞬、胸がぎゅっとなってしまった。たいていの親は子供に対して精一杯のことをするものなのかもしれないが、なんか、涙ぐましくて。ぼくがもうちょっとサッカーがうまければそんなバカ親的な恥をさらすこともなかっただろうに、ぼくのサッカーが下手なばっかりに、だめな息子であるばっかりに。

というか、ほんとうにぼくは子供らしい子供だったと思う。小学五年生といえば、ませている子はませていて、大人の空気とか、周りの空気とかも読めたりする年頃でもあるだろう。ぼくが正規の方法ではなく、ある種むりやりな方法で行くということを知っている子だって、あるいはいたかもしれない。そして韓国に行って帰る、その間中、ぼくのことを冷やかな目で見ている子がなかったとも限らない。

しかしぼくはそういうことに呆れるほどに無頓着で、機微を読む鋭さも勘の良さもなにもなく(それは今でもだが)、ただ韓国だサッカーだとばかり思っていた。そもそも親がそのようにしてぼくに韓国へ行く機会を作ってくれたこと自体、まったく知らなかった。ぼくは補欠なのになんか変だな、なんてことは露ほどにも思わなかったのだ。このことを知ったのは、高校だったか、大学だったか、とにかくはずっとずっと後になってからのことである。

そんな韓国での一番の思い出は、ホームステイ先でしたファミコンである。なんでかって、ファミコンソフトのインパクトがすごかったのだ。ひとつのソフトに100種類くらいのゲームが入っていて、日々たくさんのファミコンカセットを抜いたり差したりして遊んでいたぼくからすると、それはすごすぎる以外の何物でもなかった。

しかし今思えばあれはどう考えてもいまでいうマジコンで、海賊版もいいとこだったのだろう。

うん、確かに韓国は貧しかった気がする。ぼくがホームステイ先でおしっこがしたいと言うと、家の中にトイレがなくて、なぜだか庭で立小便をさせられた。し終わると、そこのお母さんが2Lペットボトルを半分に切った自作の手おけで、手慣れた様子でざっと水を流してくれた。

記憶は断片的だが、確かな経験ではある。どこから出航したのか覚えていないが、行きがけ、夜になって、嵐なのか普通なのか、無理やりに寝返りを打たされるくらい激しく揺れる船で、友達のひとりがひきつけを起こしたのではないかというくらい泣きわめいていたりした。韓国の釜山の観光地では、何かいかにもいかがわしい人から、小学生らしいセンスのしょうもない財布を買った。ウォンの価値がわからず、けっこうな額のお金を寺のお賽銭として放り込んだ。父親にネクタイピンを買って帰ったのも、覚えている。

なにもかも経験、ありがたいことだと思う。

まあ、そのような成り行きではあるのだが、クラスメイトのOさんの韓国へ行けた理由の予想では「監督とできている」であった。

ああ、なるほどなあと思った、と同時に、すこし動揺した。もちろん、世間にはそういうことが山ほどあるから、予想するならばむしろ妥当であろう。

しかし、ぼくはお母さんのことを決してそのように思っていなくて、いや思えなくて、だからそのような不埒な行為と母親を重ね合わせることに、すこし、動揺してしまったのだった。

男はみんなマザコンとかいう話ではなくて、たぶんぼくは、母親のことを一種の聖人のように思っているのだと思う。

もちろん、自分の母親が聖人なわけもなく、大酒も飲めば屁もひり糞もするただの人なのではあるが、ぼくが生まれたのだってやることをやったその結果には違いないのだが、しかし、あるいは父と母がちょっと抱き合っただけでコロンとぼくが生まれ落ちたのではなかろうかというような、あらゆる俗事を超越するような美化をほどこしたうえで、ぼくは母親をとらえているようなところがある。

まあ、ひとことで言えば「ぼくのお母さんは人とは違う」と、そういう幼稚なことを思いたいだけなのかもしれないが、しかし、そう思いたいということ自体が、ぼくの母親が、少なくともぼくにとってはこの世のどんな母親よりも優れた最高の母親である証だろうと思う。

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広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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