男はつらいというか芸術家は貧乏だよ
2017/08/22
金曜の夜のこと、画像の通りさんまの塩焼きと、大豆と豚肉とニンジンのトマト煮?を作って食べる。
この大豆のやつ、缶詰でポークビーンズとかいうのがあると思うんだけど、あれがぼくは大好きなのだ。それとパン、ワイン。なんかキリストっぽさMAXで、聖なる食事という感じがするし、ぼくにとってはごはんと味噌汁漬物に近いくらいの清潔さがあるのだ。そんなわけで大好きなポークビーンズを自分で適当にマネて作ってみた次第。うむ、なかなか、いやかなりうまい。
それはともかくこのさんまその他を近所のスーパーダイエーで買ってきたのだが、そこで素敵なお子様に出会う。地下の日用品その他雑貨を売っているコーナーで、ランドセル売り場を通りかかったときだった。
「あ、ランドセルほしい。持ってるけど。いいなランドセル、持ってるけど。」
小学2、3年生くらいだろうか。バカねえと母親にいなされていたのだが、ああなんていとおしい子供なんだろうかと胸がきゅんきゅんしてしまった。
そんなこんなでさんまでビール、ポークビーンズとパンでワインを飲み飲み、男はつらいよを見る。ひとりで気味が悪いほどに笑う。
「私の寅さん」という回だったのだが、これは傑作であった。マドンナが女流画家という設定で、寅さんの名言がぽろぽろ出てきて感心し通しであった。
安っぽい対抗意識で、いろいろと突っ込みどころも満載であった。女流画家は絵で飯を食っているということになっていたのだが、その作品がしょうもない静物画で、そんな絵で飯が食えるんだったら苦労せんやろと思ったり、絵が寅さんのはずみで汚されてしまうのだが、その修正方法がペインティングナイフで上塗りというところが、いやいやどう見ても油彩で乾いてるはずないんだからそれは布に油を少しつけてふき取るのが先だろうとか、とにかくは辛らつに突っ込んでしまった。
それはいいとして、この回でさくらが「ひろしさん、キャメラキャメラ!」という場面があるのだが、奇しくもこの日に読んだ本で、カメラが庶民の手に届き始めたころはキャメラと言っていたということを読んでいて、ああほんとにキャメラって言ってるわ、なんて感心した。
で、ようやくで寅さんの名言をご紹介。
「女のインテリと便所のなめくじほど嫌なものはない」
「お金持ちの芸術家は芸術家じゃない」
「彼女は芸術家だから、貧乏なんだよ」
なんか、思うところが多かった。山田洋次監督はきっと世間の典型的イメージの画家というものを描いていると思うのだが、まあ世間のイメージはこんなもんだろうと。また、画商というやつが出てくるのだが、それがまたいけすかないインテリ風のきざな男で、お金持ちということになっている。
世間のイメージとは、そういうもんなのだろう。この回は1973年に公開されたそうなのだが、悲しいかな、この日本での芸術家のイメージについては、まったく、ちっとも変わっていないのは、まあアートを取り巻く現状を見れば納得としか言いようがない。ちょっと絵を描いていると言えば、二言目には「売れるのは死んだあとなんでしょ?」というような人ばかりなのだから。いつの時代だよ、まったく。絵の留学と言えばパリだと思ってるのも、終わってるとしか言いようがない。もう、とうの昔にアートの中心はパリからニューヨークに移ってますからね。日本人にとってアートという文化が家具やカーテンを選ぶくらい身近なものになる日なんて、西暦3000年になったって来る気がしない。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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