お誕生日おめでとうについて

  2016/04/08

なんか、意外なほどたくさん、facebook経由で誕生日おめでとうコメントがきた。

きたのだが、一切、誰にもなんのレスポンスも返していない。樋口にさえも返していない。ああ、おれってば冷たい恩知らずな人間だなあ、絶対的な距離がすべてを引き裂いて、リアリティを失わせて、こうして疎遠になってゆくのだなあ、とも思うが、しかし、おめでとうって、いったい何? とか思う。

おめでとうという言葉に対してありがとうと言うのは、なるほど、理にかなっているように思われる。というか、人間としてそう返答してしかるべき、べきである、と思う。

思うが、おめでとうという言葉に対して、驚くほど、呆れるほど、はたまた悲しいほど、何の感情も起こらないのだ。

おめでとうという言葉に、うれしくなったり、喜んだり、にやけたり、ということが、まったく、起こらない。起こらなかった。

おめでとう。おめでとう。おめでとう。

とんでもなく真顔で、いわゆる死んだ魚の目で、それらの言葉が流れてゆくのを見ている。見ていた。ふうん、と思う。と思った。

ふうん。ふうん。ふうん。

ついでに、あ、そう。とも思う。

おめでとうって、いったいなんなんだったっけ。おめでとうに対してなんでありがとうって返すんだったっけ。

なんか、そういう当たり前のことが、よくわからない。よくわからないと言ってしまう。よくわからないとしか言えない。いまのぼくの気分、いや、心理状態である。こうしてまたひとり、またひとりと、失ってゆくのである。

ふうん。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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