ぼくは電話にはでんわ

  2015/07/03

つまらないだじゃれのタイトルにするくらいだから、まあやる気はない。

昨日の夜、またしてもひとりでぼけっと飲んでいると、携帯に着信があった。

たまたまマナーモードにしていなかったので、ピロロロだかパロパロパロだか、とにかくはにぎやかな音が鳴り出した。

着信を見ると、例のキンジくんからであった。何の用かなーと思いつつ、携帯を置いた。着信音が続いたが、そのままにしておいた。つまり家の電話でいうところの居留守である。

着信音が止まってから、履歴を見て、ふうんと、放っておいた。しばらくすると、また着信があった。またキンジである。またかよと思いつつ、やはり放っておいた。そして前回同様に、着信音が止まってから、履歴を見て、ふうん。

別に彼のことが嫌いなわけではない。むしろ好きである。その証拠に、二回も電話があったので、一応facebook経由で「なんじゃいー、電話は好かんのやどー。」とメールしておいた。そのメールはすぐに開封されたようであったが、しかし返事はなかった。彼は電話がしたかったのであろう。

しかし、ぼくは電話が嫌いである。たとえ親からかかってきても、十中八九出ることは無い。着信が終わったあとに、メールで「何?」と返す。

とりあえず、電話の何がどうして嫌いかを羅列しておこう。

1. 出るのに体力がいるというか疲れる(テンションをあげる必要がある)

2. 笑ったときなどは特に、手持ち無沙汰感に耐えられない

3. 人間には五感があるにも関わらず、耳と口だけで過ごす時間がもったいない。

羅列するほどたくさんの理由はなかったが、嫌いな理由に順位をつけたとしても、この順番になる。つまり、そもそも1の時点でくじけている。

なので、出ない。テンションなんか上げなくても自然体で出ればいいじゃんという人もいるが、そんなことできるわけがないだろう。仮にも人間は社会的動物なのであるし、いくら非礼なぼくだって、人に会えば自然に表情だって声色だってそれ用に変わるのだ。電話だって同じである。

それが疲れるのだ。なんでひとりでぼうっとしているときに、不意打ちの電話でササッと「は〜い」とテンションを上げていかねばならないのか。ひとりの時の気分なんてだいたいは消え入りそうな声で「は……ぃ」くらいのものなのだ。それを何が悲しくて「は〜い、もしも〜し」なんて上向きで出なければならないのか。

うぉぉぉぉ……、想像するだに疲れる。電話はやめてくれ。電話だけはやめてくれ。嫌いなんだ。ほんとうに嫌いなんだ。メールならばいくらでもする。レスポンスだって超絶早い。メールならば、真顔で「元気出して〜」とか「また明日〜」とか「気をつけて帰ってね〜」とか送るよ、ああ、送れるよ。だけどだな、電話でそんな浮ついたセリフが吐けるかッ。

というわけでみなさん、ぼくに電話はしないでください。唯一さっと出る電話は、待ち合わせとかをしているときの、「着いたけど、どこ?」というやつだけである。もっと言えば、親類含めて訃報もメールで結構です。

そういうわけなので、みなさん、くれぐれもよろしく。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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