どこにも向かわない労力

  2015/07/03

わたしのtwitter、facebook等を見ている方はすでにご存知かと思うが、ひさしぶりに料理をがんばった。

がんばった、といっても至って適当ではある。しかしまあ、喜ばれたのでよかった。が、料理に関しては"喜ばれ慣れた"というのもまた、すこし出てきた。

そりゃまあすごいって思うだろうね。まあ、おいしいって言うだろうね、という。だって、そう思われるように作ってんだから、それなりに考えて作ってるし皿とか選んでるしなるたけ見栄えよく盛り付けてるし、そりゃそうでしょう、という、なんとも不遜な感じ。

とはいえ、料理を作っているときのわたしは、傲慢強欲なわたしの性質からすると、驚くほど無心で無欲になっている。

頭の中が、そうとうに空っぽ。あれでこれを作って、これはあれに盛り付けて、これを出して、その次にはこれを、あれをこうやって、云々。いわゆる創意工夫。

しかしその労力はいったい、なんのためだろうかと思う。少なくとも、食べさせる相手に対しての愛ではない。愛なんてない。料理は愛情とかいうけれど、愛なんてなくても、全然大丈夫。

無機質な情報としての栄養学は考える。そう、ビタミンとか、食物繊維とか、減塩とか、けっこう考える。でも、人の健康なんて別に考えてないし興味はない。

これを食べて、元気でがんばってね。親とか妻とかが言うような、そういう感情が、まったく欠けている。

しかしそう考えると、やはり何を思ってぼくは料理を作るのだろうか。

たぶん、薄っぺらい自己満足。料理以外では見当たらない、妙な、いびつな自己満足。料理大好き、ってわけでもない。表現としては、嫌いじゃない、というほうがよほど正しい。

しかしそれでも、それなのに、ほとんど丸一日延々と料理に労力をつぎこんで、なお、わたしの貴重な時間を人のために使っているという被害者意識もなく、やらされてる感もなく、やってやってる感もなく、かといって、きみの笑顔が見たいからとかいう思いもなく、自分の心の奥の奥を探ってみても、なぜだか、不思議なほどに、なんにも無い。

やはり、料理をするのは嫌いじゃない、もてなすのも嫌いじゃない。ただそれだけ。裏も表もなく、ほんとうに、ただそれだけ。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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