調理師としてのわたし

  2017/08/22

画像の通り、調理師免許を取った。これが取りたいがために調理師学校(新宿調理師専門学校 http://www.shincho.ac.jp/ ←いちお母校なので宣伝してあげた)に通い初めてほぼ二年を経て、ようやくわたしは調理師となった。

感慨深いものがある。というのは真っ赤な嘘で、この賞状チックな紙切れは躊躇なく適当にまるめられお尻のポケットになんとか党の政策パンフレットのごとく乱暴に突っ込まれ汗その他の湿気でヨレヨレになって帰宅した次第である。

なんと言っても別に飲食関係でなにかしら志があったわけでもなんでもない。憧れているシェフだとか料理長だとかがいるわけでもない。あえて尊敬するとすればクックパッドであって、ただ単に調理師免許を持っていると言いたかっただけなのである。ゆえに今日からぼくの人生その他が変わるわけでもなんでもなく、言ってみれば120万円くらいで調理師免許を買ったようなものである。

自動車免許ならばさあこれからドライブへとなるだろうし、教員免許ならば子供たちを育てるぞとなるだろうし、医師免許ならば人を救うぞとかなんとかなるであろうが、しかし、調理師免許は名称独占資格であって、それがあるからと言って何か特別なことができるわけではない。できるとすれば、調理師免許持ってるし料理作ってあげるよと頭の悪い女をたぶらかすくらいのものである。

いや、建前としては、おいしい料理を作って親孝行を、または結婚してクッキングパパとなり積極的に家事育児参加し22世紀的父性を演じようと思う次第であるが、言うまでもなく建前は現実ではない。

学校入学前も卒業後も調理師免許取得後も、相変わらず料理は嫌いではないが好き!というほどではない。つまりまあまあである。

ぼくの考える食の真理は、好きな人や愛している人と食べればカップラーメンでも超がつくご馳走となる。そう、キリストよろしく人はパンのみにて生くる者にあらず(新約聖書「マタイ伝」第4章から)。重要なのは愛です、愛。L・O・V・E、ラヴです。って、そこまで言うならわざわざ調理師免許なんか取るなよという感じだが、まあ、実際に取ってみて悪い気はしていない。かと言ってそれほど良い気もしていない。つまりまあまあである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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