人はみな意味不明

最終更新: 2015/07/03

今朝のyahoo!トップにリンクが貼ってあったyahoo!知恵袋を読んで、朝っぱらから気分が悪くなった。いや、別に気分は悪くないが、呆れた。憐れんだ。それは「恋愛する資格」というトピックで、それはもうしょうもない人間のしょうもない悩みのしょうもない文章であった。

▼下記URL

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1441941879?fr=top_mantenna

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1225692997?fr=top_mantenna

と言っても今日は別にこれについて書くわけではないので、暇で暇でしょうがない人は読んでみればいいという程度であるので全然流してもらってかまわない。とりあえずぼくとしては、おまえらほんっとしょうもない人間すぎてびっくりするわ、五万回くらい死んで、そのまま死んどけと思う。

閑話休題。

さて、今日もまた引用ネタである。というのも、先週より覚醒したわたしはストイック過ぎて、外界での出来事が皆無なのである。電車にも乗らないし、歩きながら本を読んでいるし、家では延々と絵を描くか本を読むかしかしていない。

しかし、わたしの人生はこれでいいのだ、少なくとも今は、という充実感が静かに満ち満ちている。そうだ、酒を飲んで厭世に浸って嘆いている場合ではなかったのだと、今さらながらに気がついた。

今朝、放送大学で、社会学者らしいどこかの教授がこんなことを言っていた。育児の最中は保育園の送り迎えをはじめ子供に時間を取られてまったく研究ができなかった。ライバルは次々と論文を発表して、着実にキャリアを積み上げていっている。あの頃は本当にストレスフルで、苦しかった。

嫁も子も未だ不在だが、そういうもんなんだろうなと、妙にしみじみと思った。こうして自分の自由自在に使える時間というのは、ほんとうに今だけなんだろうなと思う。そして未来、実際に時間が自由に使えなくなったときに、ああ、なんであの時分にもっと有用に使わなかったのだろうかと後悔する、というのが月並みな人間の常だろう。

それはともかく、昨日からサマセット・モームの「人間の絆」を読み始めた。上下巻セットで買ったのだが、開いてみると「全三巻」と書いてある。そう、上中下の三巻だったのである。どうでもいいけど長すぎるよ! そんなに小説好きじゃないんだよ!

とかなんとか、ちょっとうんざりしながらあとがきから読み始めた。ぼくはそもそも書物に面白さや感動は求めていないので、ネタバレとかそんなことはどうでもよいのである。

するとまたしてもすばらしい名文に出会ってしまった。

「人間について、もっとも私を驚かせたのは、彼らが矛盾に満ちているということだ。首尾一貫した人間など、ただの一人もお目にかかったことがない。まったく相容れない諸性質が同一人物の中に存在し、それでいて、もっともらしい調和を生んでいるのには驚かざるをえない」

(『サミング・アップ』17章)

人間の絆からじゃないのかよという感じだが(早速このサミング・アップも注文……はさすがに無い。すでに上中下巻の長さにくじけている)、これがモームの人間観の真髄だということである。

確かになと思う。たとえば綺麗好きと自他ともに認める人が油のついた指を服の端で拭いて平気だったりもするし、家族にも他人にも恋人にも優しい人が、お店の店員にだけは優しくなかったりする。こういう事例を上げれば枚挙にいとまがない。

この文のもっとも優れているところは「もっともらしい調和を生んでいる」という指摘だろうと思う。たとえば小説を書くとして、綺麗好きという設定の人物を作ったとする。その人物に、油のついた指を服の端で拭かせるだろうか。

このような矛盾は現実ではなんら問題なくあり得るが、小説の世界では絶対にあり得ないのだ。これこそ事実は小説より奇なりといわれる所以であろう。

まあ、もしも人間というものが首尾一貫している存在であれば、誰も恋人や結婚相手を見誤ったりはしないだろう。そうして揉め事もごくごくまれなことだろう。しかしこれほど矛盾した存在だからこそ、人は人を愛したり裏切ったり執着したり依存したりするのである。それこそ矛盾した存在として。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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