小さな人間の小さな生活の小さな後悔

  2017/08/22

最近、毎朝ナチュラルローソンに寄っている。買うものは「Dole JuiStand」という、¥180くらいする、お値段高めのスムージー風の野菜ジュースである。

で、今朝もそれを買うべく足を運んだ。めずらしく、なんだか小腹がすいていたので、「てりやきバーガー」も手に取り、レジに並んだ。

あらためて思うが、東京は並んでばかりである。たかがコンビニでなぜにそこまで行列ができるのか。まあそれだけ人が多いということなのだろうが、とにかくは今日は8人程度並んでおり、ぼくもその列に加わったわけである。

1人、2人とはけていく。するとふっと、なんでぼくはコンビニでてりやきバーガーなんか選んじゃったんだろうかという気がしてきた。コンビニのてりやきバーガーなんて、てりでも焼きでもなんでもない、おもしろくもなんともない味に決まっているではないか。実際、いままでも、ああ、ふつうにヤマザキのまるごとソーセージとかにしとけばよかったなと、何度も思ったことがあるのである。

別のに替えてこようか、でも、また並び直さねばならない。しかし、てりやきバーガーはちょっと。しかし、また最後尾。しかし、しかし、しかし。

そうこう思っている間にも順番はどんどん進んでゆく。レジに近づいてゆく。

次が自分の番だというときに、はっと、目に飛び込んできたものがあった。レジ脇にある、肉まんである。

ぼくはひらめいた。ああ、そうだ、肉まんにすればいいんだ。肉まんだ!

いや、でも、しかし、このくそ忙しいのに、よくも「すいません。このてりやきバーガーをやめて、やっぱり肉まんにしてもらえますか?」なんて間抜けなことが言えたものだろうか。

ぼくが店員ならば、(てりやきでも肉まんでもどっちでもいいじゃねーか。両方とも挽き肉と小麦粉だろうがバカヤロー、と思いつつ顔をチラリと見やる。やっぱりだよ。おまえみたいなしょうもない顔のやつはね、だいったい、だいたいそう。まったくわけのわかんねーこと言うんだよ。小さいんだよ人間が。え、なに? てりやきバーガーをやめて肉まんにしてください? ハァ? ほんっとどっちでもいいだろ。てりやきバーガー食ってさっさと寝ろ。そんなこともはっきりできねーからいつまでも結婚できねーんだよクズヤロー。)くらいは軽く思うであろうことは火を見るよりも明らかであった。

そして、とうとう、ぼくの番がやってきた。

ぼくは商品を差し出した。今だ。言うなら今なんだ。

「あの……」

「あたためますか?」

「あ、はい」

「279円になります」

「あ、はい」

「ありがとうございました」

人の一生はあまりにも短く、後悔すること夥し。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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