労働に追われて逃げだせば

最終更新: 2017/08/22

今月の初旬より、わけあって仕事場が稲荷町になった。と言っても実にマイナーな駅であろうと思われるので、上野駅の隣だということで理解していただければと思う。

自宅からドア to ドアで1時間30分ほどもかかり、通勤がかったるくて仕方がない、が、諸事情あって仕方がないので日々忍耐である。

長い通勤時間も、電車の中では本を読めばいいと思っていた。しかし、最近は加齢か飲酒かもしくはその複合かによる体力低下のせいか、特に朝などは、電車内で本を開くと5分とたたずに睡魔に襲われる。で、立ったまま寝てしまう。

そうして意識が朦朧としながら、電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、途方に暮れてしまうような倦怠感を抱えて出社となるのである。とはいえ、私などはまだ手枷足枷的なしがらみが皆無なので、気楽なものではある。そう、ほんとうに嫌になったら、すぐにやめてしまえばいいのである。困るのは私一人で、私が泣けばいいだけなのだ。

しかし、妻子でも居たとしたら、自ずとその労働には危機が、または鬼気がこもる。それこそ手枷足枷はたまた首枷となって、逃げたくとも逃げられないのである。そしてついつい、電車が滑り込んでくるホーム、その線路上が、唯一の逃亡先のようにさえ見えてしまうとも限らない。いや、真面目な話。

価値のない、くだらない仕事はしたくないなあと思う。やりたいことだけやってお金をもらいたいなあと思う。

売れっ子芸術家である宮島達夫がいくら「プロの芸術家=作品でメシを食っている」という考え方は非現実的な幻想だとは言っていても、そんなことはとっくに知っていても、わかっていても、是が非でも絵でメシを食いたいなあと思う。いや、けっこういい文章も書くので、合わせ技でなんとか、ぼくの人生を成立させてほしい。というか、する。

閑話休題。

つい先ほどのこと。今日明日で個展の作品を仕上げる予定なので、その景気づけ?として、吉野家に行った。

先輩後輩関係とおぼしきサラリーマン二人組が話していた。

「それで黄身と白身を分けて……」

そちらを覗き見たわけではないが、白身と黄身の分離器について話しているようだった。

「黄身だけにするんですよ」

「なるほど」

「キミだけを愛してる、って感じで」

「少年隊かよ」

うすら寒くて、ちょっと子供に戻りたくなった。

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新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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