脱・刹那主義

  2017/08/22

今この瞬間ということをよく考える。二度とは戻らないこの時間を、どう使うか。

それは酒の酩酊であったり二度寝であったりする。そういう浅はかな欲望で消費される時間は、それはそれでいいような気もするし、すごく虚しい気もする。最近は惰性にまかせて、しょうもない欲望に身をまかせていた。

が、しかし、2013年も半ばのいま、ようやくわたしは覚醒したようである。村上隆の「想像力なき日本」(角川ONEテーマ21)のおかげで。

詳細は後日の読了本ブログに描くが、読んでいると村上隆のストイックさ、そそり立つ理想の高さにヒリヒリして、胸が痛くなる。後ろめたくなる。ああ、おれはいったい何をだらだらやっているのだと。この直前に読んだChim↑Pomの芸術実行犯にも別の意味でヒリヒリしたが(ARTDISFORをやってるときのえも言われぬ高揚感を思い出したり、羨ましくなったりして、ヒリヒリというよりは、ジクジクと痛むという感じ)、とにかくは、ああ、とりあえず今のおれは死んだほうがいい。もっとがんばれクズ。とつくづく思った。

ということで、わかりやすく気持ちを入れ替えた。反省した。朝はもちろん、帰宅してからも制作することにした。少なくとも、つい4、5ヶ月前までは仕事の後に学校に行って3時間くらいは授業を受けて、それでも平気で生活してたわけでしょう? その時間くらい絵描かんかいボケェ、という気持ちで。

現代アートはガリ勉しなきゃだめだという村上隆先生の言うがままに、アート系の本をアマゾンで買い漁った。この数日で、郵便受けがパンクするほど届く予定である。

がんばれ自分。画家になりたいんだろ。だったら描け。才能が無いなら努力でねじふせろ。近くに友達がいるわけでもない、結婚しているわけでもない、子供がいて時間を取られるわけでもない。死ぬほど描くなら今しかないだろ。

人間には、モチベーションというものが確かにあるのだと思う。どうやってそれを沸き起こらせて、そして、保ち続けるか。

知的で刺激的、かつエキセントリックな友人は皆無。眠たい会話で、酔いつぶれるのがせいぜいの人ばかり。というわけで、今の環境でぼくにモチベーションを与えてくれるのは、きっと本しかないと思う。もしくは美術館、だが、いかんせん出不精なので、やはり本。

正直、Chim↑Pomの本とかは、あえて読むのを避けていた。なぜなら十中八九、羨望や挫折感その他で、心が嫌な感じでざわめいてしまうので、それを恐れていたのである。

だけど、確かに彼らのやってることは良くも悪くも圧倒的に刺激的で、興味深い。だからこそ悔しい。

別に同じことをやりたいわけではないが、同じ現代アートというフィールドに行きたくて、そこで生きたいなあと、やはり素直に思う。

たいていのことはどうでもいいが、ことアートに関しては、全然どうでもよくない。どうでもよくないなら、きちんと取り組むしかない。

ダメかもしれない。無駄かもしれない。そういうことはもう、考えない。徒労に終わろうがあるいは万が一実ろうが、それは置いといて、何も考えずに、ひたすらに時間を注ぎ込む。死ぬ気で注ぎ込む。その先にしか"なにか"は無い。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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