さよなら、ぼくの観葉植物くん
2015/07/03
東京からはるばる連れて帰ってきた観葉植物が枯れた。
彼は(彼女かもしれないが)、ここ2、3年のぼくのすべてを知っている、もの言わぬ忠実な傍観者であったので、なんだか感慨深いものがある。
彼はぼくの怒声や罵声、蛮行のすべてを、ただ傍で見ていた。それはもう、並々ならぬ負の空気の横溢であった。それがだいたい週に一度は横溢どころか、破裂爆発していた。
そんな空気にもめげず、彼は枯れなかった。もしかすると飼育者に似て、人のことに無関心なのかもしれない。
それにしても、なぜようやく静かな、穏やかな空気が流れ始めた今、いまごろ、枯れてしまったのか。まあ、ぼくが日々しみじみと悲しく虚しいという負の空気を吐き出しているからかもしれない。
それはともかく、たぶん彼は、世界のありとあらゆる植物の中でも上位にくるだろう忍耐力、生命力があった、とぼくは思っている。
人の子に限らず植物もまた親を選べないが、仮に人の子供だったら精神に障害をきたすことは避けられないだろう状況の日々の中で、よくがんばったなあと、しみじみと思う。
ぼくは筋金入りの動物嫌いというか犬猫嫌いだが、植物に対する愛は少なからずあるようである。
ぼくの観葉植物くん、ありがとう。そしておつかれさまでした。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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