人と人は解り合えないようにできている

  2015/07/03

病んだ感じで生きている中学生みたいなタイトルだが、そう思っている。

しかし、その言葉のあとに、こう付け加えたい。「しかし、解り合う努力だけはできる。」

いや、もうすこし付け加えたい。「しかし、その努力が実るとは限らない」。

さらにもうちょっと、「むしろ、たいていの場合、実らない。なぜならわたしはあなたではないし、あなたはわたしではないから」

そういうものだと思う。

なんか、まあ、最近思ったこと。

ぼくは泣きながら思いのたけをしゃべっている。しかしどう見ても相手の心には一向に響いていない様子。

別の日。その同じ相手が泣きながらぼくに思いのたけをしゃべっている。しかしぼくの心には一向に響いてこない。

むしろ、泣けば泣くほど、寒々しい気持ちになって、心はどこか遠いところへと離れていく。その泣き顔に、ひとこと、「バカなの?」と言ってあげたくなる。

なんなのだろうかと思う。一生懸命、真剣にしゃべれば、そして誠実に思いのたけを伝えれば、同意されるかどうかはともかく人に伝わるものではなかったろうか。少なくとも、そのように教わってきたのではなかったろうか。

それならば、その理屈が真理ならば、泣きながらしゃべるというのは、それこそ最上級の話し方ではないだろうか。

しかし、そうではないのだと、つくづく思う。

たとえば、涙は女の武器だというが、ぼくとしては涙なんて屁にもならないと思う。少なくともぼくは、女が泣いたからといって動揺したことなど一度もない。勝手に泣いとけと思う。

そういう人格だから、相手もそう思うようになるのかもしれない。ぼくの涙はたいていの場合、なんの足しにもならない。せいぜい目薬になるのが関の山である。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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