吉野家でキレる人へ

  2017/08/22


先日、牛丼チェーン店の吉野家で、世界に冠たれるであろう小人、原田宗典風に言うと、世界小人コンテストがあれば間違いなく表彰台には上がれるであろう小人に遭遇した。

ちなみに小人というのはコビトではなくショウジンであり、君子の反対語である。

小人閑居して不善をなす、などのことわざに出てくる。このことわざをぼくはかなり好きなのだが、確かに、ぼくを含めバカは暇になるとロクなことをしないのである。ちなみに君子の場合は危うきに近寄らず、とか、よく言われることわざの通りである。

で、もしかすると今まで見た人間の中で一番小人ではないかという人に出会った、というのが今日の話。

小人はまず、店長を呼びつけた。(ちなみにぼくはお持ち帰りであり、その小人の近くのレジ前に立っていた。)

小人「この豚丼、まっずいなあ。なんだこれ」

店長「は、あ、そうですか。いや、あ、はあ」

小人「こんなんでよく客に出せるなあ。え?これが豚丼かよ」

店長「えあ?あ、も、申し訳ありません、いますぐお作り直しを……」

小人「そういうことじゃねえんだよ。まずいんだよ、この豚丼がよお。おまえんとこでは、こんなもん作ってんのか?ええ?」

店長「え、あ、はい、ああ、申し訳ありません。ええ、吉野家では、このような味で、工場で一貫して作らせていただいておりますので……」

小人「まっずいなあ。こんなんじゃあな、まったく納得できないんだよ。なに?なんだよこれ。他になんかないのかよ?ええっ?」

店長「え、ああ、はい、このメニューに載っているものがすべてになりますですはい」

小人「ったくよお、(メニューを指差しながら)このうなぎはなんなんだよ、なんだこれ、ほとんどご飯じゃねえか、おかしいと思わないのかよ」

店長「あ、え、は?いや、うなぎにつきましては、このような形で提供させていただいておりまして……」

小人「ああっ!?これで680円!?高えよ!ほとんどごはんじゃねえか。ったく。」

店長「いや、あの、しかしですね、そのような形で……」

小人「半ライスにはできねぇのかよ?」

店長「え、いや、あ、う、このような量でお出しいたしておりまして……」

小人「あのさぁ、おれこんなんじゃ納得して帰れねえよ(ごはんは残し肉部分だけをきれいに食べた豚丼の器をカツカツ叩きながら)。こんなんじゃ!納得して帰れねえよ。半ライスにできねえのかよ?」

店長「いや、いえ、うなぎはそのような形で……」

小人「うなぎ持ってこいよ」

店長「あ、はあ、え、あ、はあ……」

小人「半ライスでうなぎもってこいよ!おれはこんなんじゃ納得いかねえんだよ(まずいと連呼しながら自身でしっかり豚丼のメイン部分をきれいに召し上がった豚丼の器をカツカツ叩きながら)」

店長「あ、はあ、いや、しか、あ、はあ……」

小人「うなぎを半ライスで出せよ。豚丼まずいんだよ!口直しに半ライスでうなぎを出せよ!出さなきゃ仕方ねーだろ!こんなまっずいもん出しやがって!ったくよお」

このあたりでわたくしは吉野家から出た。

ホームレスにとってさえ安いだろう豚丼でキレる50代くらいのオッサン。そしてそれをもとにうなぎをせびるオッサン、オッサン、オッサン。

閉口、悲哀、憐憫。

すべての人間に尊厳があるわけではない。自由がタダではないのと同じように、それは求め、勝ち取るものなのだ。

人間を、がんばろう。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

新しいのか古いのか、とにかくは妙な時代に突入した、らしい

2014/06/30   エッセイ, 日常

塩村議員へのヤジについて思うところがあった。つらつら書こうかとも思ったが、一言で ...

ちょっとお金の話をしよう

2013/08/02   日常

人はあまりお金のことを口にしない。かなり親しくても、その内実までは話さない。 実 ...

テンションは緊張という違和感

2008/09/05   エッセイ

なんか蒸し暑くて顔がやたらとヌルヌルする。 ヌルヌルした顔は嫌いだ。ヌルヌルした ...

わたしはわたしのお友達

2013/07/17   日常

だんだんと切実になってきた。友達が欲しい。損得関係なく、仲良くしたい大事にしたい ...

追われない人

2008/10/01   エッセイ

天気が悪くて困る、何が困るって洗濯物が乾かなくて困る、が、部屋干しは室内の美観を ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.