かすみを食って、あの世では。
昨日も食って、今日も食い、来る日も来る日も何かしらを食っている、われわれは。
いつまで食うんだろう? そう考えると、ときに馬鹿馬鹿しくなって、うんざりする。ロマンも糞もあったもんじゃない。
逆に言えば、死はロマンである。食わないですむし、むろん、糞もひらないから、美しい。
友人の訃報に接して、なぜだかそんなことを思った。彼女はうまそうに飯を食う人だったからかもしれない。
それにしても、ほとんど悲しみを感じないのはなぜだろうか。親友というほどではないが、ひところは毎日のように顔を会わせていた。
しかし、もう何年も会っていない。だからこれは、それが何十年か延長されただけ、あの世に行くまで会えなくなったに過ぎないともいえる。
あの世なるものを積極的に信じているわけではないが、少なくとも、現世で会えることだけはもう絶対にないのだから、再会の可能性があるとすればあの世しかないだろう。
それで彼女は、いまごろ何を食っているだろうかと思いをはせる。たぶん、彼女は「かすみ」を食っている。
それはまさしくこの世ならぬ食べもので、言うまでもなく糞とは無縁の美しい代物だ。
と、この世からすれば「かすみ」そのものになってしまったような彼女が「かすみ」を食う姿がありありと浮かんでくる。それは透明と透明で、すばらしい透明で。
それをまねて「かすみ」を食おうとして私は、悲しいことに気がついた。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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