美術家 新宅睦仁のブログ。ほぼエッセイ、ときどき現代の美術とアート。

あなたの存在意義

 

祖母がオレオを食べている。それは三時のおやつで、しかし入れ歯には固く、難儀そうに見える。

あんたは誰かと聞かれる。答えるも、そこには会話と呼べるような手応えがない。

似たような人が、周りに五人六人ばかり座っている。みな一様に生気がない。

もそもそ、あるいはぺちゃぺちゃと、それぞれオレオを食べている。職員に口まで運んでもらっている者もある。

何が悲しくて生きているのだろうかと思う。彼らに生きている価値なんてあるんだろうか。

帰りの車内で母が言う。ああなったらおしまいよと。ああなってまで生きたくない、とも。

完全に同意しつつも、私は全力で探さずにはいられない。彼らの価値を、その存在意義を。

それは昨日のことで、今も懸命に探しているが見つけることができない。

かつては、その種の人はさっさと死んだ方がいいということで納得できたものだった。しかし今は、その安易さが恐ろしい。

そこには、私自身の価値がさも自明であるかのような傲慢さがある。何かしら有用なモノ・コトを生産しさえすれば価値があると信じるのは、現代の病理だろうと思う。

実際、我々の信じる価値などというものは、いつでも吹けば飛ぶようなものであろう。

それはわかっている、わかってはいるのだけれど、いま、あの祖母にはなんの存在意義があって、どんな価値があるのか、私には見つけることができないでいる。

新宅 睦仁

1982広島県生/2005九州産業大学卒/2013新宿調理師専門学校卒/現代美術家/ロサンゼルス在住のカトリック。牛丼やカップヌードル、コンビニ弁当等、食物をテーマに作品を制作している。無類の居酒屋好き。

Latest posts by 新宅 睦仁 (see all)

こちらの記事もよく読まれています

1さくら水産の品格(ランチ編)

食べ放題は下品である。いや、食べることに限らず、基本的に”際限がない”ということ ...

2美術家になれないあなたは悪くない

最近、SNSで美術大学の是非についての意見が飛び交っている。美大に行く費用を作品 ...

3飽きるとは何か(子供の感性を失った大人の飽きについて)

「悪いな。もう、おまえには飽きたんだ」 昔の安いドラマにあるお決まりのセリフであ ...

4さくら水産の品格(居酒屋編)

大人と呼ばれるようになって十年も経てば、誰しも”酔いどれたい”という日があるもの ...

5作家とギャラリーの取り分について

作家の人たちと話すと、たまにこの話題になる。要するに金の話である。 世の中は、何 ...

  関連記事

戻れない意義

2008/06/22   エッセイ

ダイエーで昆虫を打っていた。ワールドインセクトとか書いてあった。日本のスタンダー ...

自画像用のメガネを変えました

2009/05/01   エッセイ

なんか昨日ひぐちに自画像はしっかり残るもんだからあのどやメガネそろそろ変えた方が ...

時間の流れかた

2008/09/25   エッセイ

福岡に行ったり広島に行ったり長い一週間になりそうだと思っていたけど気づけばまたい ...

孤独をもてあます頃に

2013/12/17   エッセイ, ブログ

大学のころは孤独が好きだった。 ひとりで居ると、心が安らいだ。ひとりで居る部屋の ...

興味が無いから笑えない

2007/12/01   エッセイ

今日も晴れ。雨男なのに奇跡的によく晴れてる。 いつからか興味が持てなくなってしま ...