ネットで鎖国に励む国、ニッポン

初めてリモートワークを経験したのは、2020年のコロナ禍であった。

私はロサンゼルスに住んでおり、現地企業でWEB関係の仕事をしていた。

騒がれ始めた当初こそ、酒好きの社長は「コロナビールを飲んでコロナをやっつけろ!」なんてしょうもない飲み会を相も変わらず続けていたが、次第に冗談ではなくなっていった。

ついに街はロックダウンされ、自宅に会社のデスクトップパソコンを持ち帰って仕事をすることになった。

日系の会社だったから、クライアントには日本企業が多かった。

自然、日本のWebサイトに頻繁にアクセスすることになる。

会社での常時VPN*接続というネット環境と異なり、しょっちゅう出くわすことになったのが『403 Forbidden』である。

これはエラーメッセージのひとつで、「あなたにはこのページを見る権利がありません」という意味である。ページ自体は存在しているが、「アクセスを拒否」されているのだ。

日本以外のWebサイトではまずお目にかからない。つまり、日本の多くのWebサイトが、意図的に海外からのアクセスを拒否しているのである。

日本の主要なレンタルサーバーが、さも当然のように公言している。

「セキュリティ強化のため、海外からのアクセスを制限」しているのだと。

仮にそれが真実なら、その海外で暮らしている人々のネット接続は無防備で、常に危険極まりないということになる。

裏を返せば、日本国内のネット接続だけが世界で唯一安全だと言っているのと同じである。

そんなバカな話はない。

インターネットの本質は、世界のどこからでも自由かつ相互に情報にアクセスできることにある。

だからこそ、これほど普及したのである。閉鎖的なインターネットに価値はない。

今後、ChatGPTのようなAIが普及すれば、まず間違いなく、Google等の検索結果は言語の壁を越えて表示されるようになる。

役に立つ優れた情報がどんな言語で記述されているかは問題ではないからだ。

その時、いくら有益な情報が掲載されているサイトでも、日本のWebサイトだけは検索結果に出てこない。わざわざ「アクセスを拒否」しているからだ。

これは現代版「鎖国」というべき状態であり、国益を損なうと言っても過言ではない。

そもそも、海外からのアクセスを遮断することを「セキュリティ強化」だとうたうこと自体、詭弁もいいところである。

いっそ、「お宅の空き巣対策のために玄関を廃止しました」と言っているのと変わりない。もはやそれは家としての用をなさない。

その後、日本では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現金10万円の一律給付が開始された。

しかし、私は国外にいた。「日本国内に住民票があること」という受給要件を満たせず、結局、受け取ることはできなかった。

これには多くの海外在住の日本人が声を上げ、署名活動も行われた。

しかし最後まで、覆ることはなかった。れっきとした日本人なのに、である。

日本という国に見捨てられたにも等しい。苦難は誰にとっても苦難で、日本人は世界のどこにいようが日本人ではないか。

その点、アメリカという国には頭が下がる。

ごく短期の就労ビザホルダーで、一外国人に過ぎない私にさえ、特別給付金として、日本の10万円より多い「1200米ドル」を気前よく支給してくれたのである。

むろん、個人としての私は喜んだが、日本国は恥ずべきだと思う。

いま、世界は押しとどめようもなく相互につながっているのである。いい加減、島国根性は終わりにした方がいい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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