いやな奴を退けよ
この世にはいやな奴というのがいる。いいや、ぼくは、わたしは、そんな人ぜんぜんいませんよという人は、残念ながら他でもないあなた自身がそのいやな奴である可能性が高い。
ふつうに生きていれば、いやな奴という存在に嫌でも出くわす。それはもうこの世で生きる者はみな命の尽きる定めのようなもので、我々がいくら気をつけてみてもどうこうできるものではない。
そこで唯一できることは、そのいやな奴を可能な限り遠ざけることである。いかにも消極的ではあるが、しかし、それこそが正攻法なのである。
いやな奴というのは、店で出された料理にまぎれ込んだ髪の毛のようなものである。髪の毛なんて珍しくもなんともなく、まるきりのハゲでなければ自らの頭にもごまんと生えているそれが、料理の中に迷い込んだ途端、それはもう人をして総毛立たせずにはおかない。
なぜか。断じてそれが異物だからである。そこにあってはいけないのである。だから、我々のできることといえば、それを遠ざけて店を出るか、あるいは作り直してもらう他ない。
どうしてこんなところに髪の毛が? なぜに私がこんな目に? ――そんなことをいくら考えてみたところで、らちのあくものではない。あなたのクソいまいましいその味噌っカス野郎があなたの目の前に今日も無駄に元気でいる理由は、まことにお気の毒ではあるがもっともらしい理由は何もない。
どんなつまらない人であろうと、それは他山の石であってあなたを磨くことになるのだと昔の人は言った。しかし、そのいやな奴は、あなたを磨くのではなく削るのである。磨くと削るは、むろん同じ行為には違いないが、後者の場合、あなたは擦り切れて消滅してしまうおそれがある。
削りに削られた挙げ句に潰えた無数のいたましいニュースを持ち出すまでもないだろう。そう、いやな奴からは、ただ距離を置くべし。そのためならば、その学校、その会社、そのグループを抜けるべし。
いやな奴は、ほんとうにどこまで行ってもいやな奴でしかないのだ。断言する。いやな奴とも折り合いつけんと骨折る暇があるのなら、好ましい誰かと愚痴でも並べた方がよほど建設的である。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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