だれかしらの結婚式のスピーチ
2020/02/06
最近、特に書くことがない。仕方ないので、今日はちょっと前に書いた結婚式のスピーチをさらしておくことにする。いや、ぼくが読むのではない。ぼくにスピーチを頼むような友人は樋口くんくらいしか思い当たらない。というか、たぶん、それがぼくの人生で最初で最後のスピーチになるだろう。
なぜなら、先日はじまった展示だが、いろいろ知り合いが来る来る来る~と勝手に思っていたのだが、実際は、誰一人として来やしなかったのである。
あらためて自分の人望の無さを痛感した次第である。
まあ、自分の日頃の行いおよび性格を考えれば当然ではある。しかし、とりあえずみんな死ねばいい。
さて、先日、結婚式のスピーチの作成を頼まれた。いや、頼まれたというよりも、単にぼくが文章を書きたかっただけな気もする。
本意は知らない。とにかくは友達に、いや、かたくなにぼくは知り合いだと主張するが(男と女の友情などあり得ないとわたくしは断固として主張するッ)、まあ、知り合いに結婚式のスピーチの作成を頼まれた。
とりあえず概要とポイントをまとめて送るようにと伝えると、下記のような内容が送られてきた。
ここから〜
友人スピーチ(若い親族も参加する二次会)
新郎 タカオ(仮名) 35?(忘れた)歳 私初見
新婦 ユカ(仮名) 30歳
草野球チームで出会う。ユカちゃんはいつもタカオに馬鹿にされているので、いざとなったらあなたを引っ張っていく力があるんだぞーなめんなよーお幸せに。ということをタカオに言いたい。
タカオ、ユカちゃんに話しかける口調ではなく、お客さんにこのエピソードを紹介する感じで。最後だけタカオにもの申す。二次会でのスピーチなのであまり畏まらず。
【1】はじめの挨拶
【2】ユカちゃんとの出会い当時の印象やら
【3】チケット間違えた事件
【4】タカオへ
【5】結びの言葉
【1】はじめの挨拶
ただいまご紹介にあずかりました、新婦友人の福原(仮名)です。今日はユカちゃんの幸せ一杯の笑顔と素敵なウェディングドレス姿を見ることができて本当に嬉しく思っています。
大分緊張していますが、心からの祝福の気持ちを込めてお祝いのメッセージを読ませていただきたいと思います。
(※なんか適当に書けましたが…)
【2】ユカちゃん
・出会ったのは○年前、専門学生の頃
・当時の印象は(きっとだいたいの人が思うと思うけど)おっとりした小リスのような小動物でなんかふわふわしててあぶなっかいしい感じ。
・仲良くなった私達は大概の行動を共にし、ほぼ毎晩平均2時間長電話をするというそこらへんのカップルよりラブラブだった。
・ユカちゃんは私の後ろをチョロチョロついてくる、金魚のふんみたいな子だったけど、そんなユカちゃんのイメージを払拭するような事件が勃発。
【3】事件
・あるお盆の日に京都に旅行に行くという計画を経てる
・(当時はお金がないので)夜光バスのチケットと旅館の手配を私が率先して担当
・当日バス乗り場でチケットを見せると、私の盆ミスで翌日のチケットを購入していたことが判明。
・運悪くその日に出るバスは全て満席。お盆の時期だから明日のバスも満席だろう、と言われて私パニック。
・私→ごめんねしか言えないロボットと化す。
・さっきまで「眠い、お腹すいた」と子供みたいなことを言ってたユカちゃんの目が覚醒。
・「じゃあ、まずチケット払い戻し出来るか窓口に行って聞いてみよう。バスは無理だったら明日朝一番の新幹線で京都に行って、今日は近くのまんが喫茶でDVDでもみよう、うんそうしよー!」と言って私の手をひいて歩きだす。
・ユカちゃん別人…
・さっき私の後ろにいたはずの小動物はいきなり成長してしかも男前になった
・これを期にユカちゃんはいざというときに変身するチョッパー※のような子だと思うようになる。
※ワンピースという漫画にでてくるちっちゃい鹿で変身するとデカクいかつくなる。
【4】タカオへ
・(もうご存じかとは思いますが)ユカちゃんは小動物のようなかわいい見た目とは裏腹に、芯のしっかりした頼れる肉食系です。
・普段はふにゃふにゃしてるけど、いざというときはユカちゃんがよしの手を引き、行くべきところへ連れていってくれると思います。的な。
・安心してユカちゃんをつれて歩いてください。でもふわふわしてるのも事実なので、手綱はちゃんとにぎっていてね。
・誉めて延びる子だからそこんとこもよろしく。
お互いを思いやる気持ちをわすれずに、いつまでもお幸せに。
【5】結びの言葉いらないかも
〜ここまで。
で、上記を受けてわたくしが作成した文章が以下。
ただいまご紹介にあずかりました、新婦友人の福原と申します。
今日はユカちゃんの幸せ一杯の笑顔と素敵なウェディングドレス姿を見ることができて本当に嬉しく思っています。
大分緊張していますが、心からの祝福の気持ちを込めてお祝いのメッセージを送りたいと思います。
まず、わたしとユカちゃんとの関係ですが、具体的には1460時間以上のおしゃべりをしてきたという仲です。日数にすると、24時間ノンストップで60日以上はしゃべったという計算になります。
専門学校時代に出会ってからというもの、たちまち仲良くなり、ほぼ毎晩2時間以上はしゃべっていました。いま思えばよくそんなにしゃべることがあったなとも思うのですが、彼女は小リスとか小動物のような雰囲気だったので、もしかすると私はペットに話しかけるような感じで時間を忘れていたのかもしれません。
でも、どちらかというとユカちゃんは魚類でした。ユカちゃんは、いつも私の後ろをチョロチョロとついてくるので、私は常々、金魚のふんみたいだと思っていたのです。
でも、大人になって今、よくよく考えてみれば、それは魚類というより微生物だったのですが、ある日を境に、私にとってのユカちゃんが劇的に変わりました。
ある夏のお盆に、ユカちゃんと二人で、京都へ旅行に行く計画を立てたのです。そのころはお金もなかったので、一番リーズナブルな夜行バスで行くことにしました。もちろんユカちゃんは頼りにならないので、バスと旅館のチケットはわたしが手配しました。
そして旅行の日、ユカちゃんと一緒に、夜行バス乗り場に行きました。二人ともテンションが高かったと思うのですが、バスに乗ろうとしたときにすべてが終了しました。
私の凡ミスで、その日ではなく次の日のチケットを取っていたのです。他の方法を探しましたが、その日のバスはすべて満席。しかもお盆の時期なので、翌日のバスも満席でした。
私は完全にパニックになって、ユカちゃんにごめんねを繰り返すロボットになってしまいました。
わたしはもう、その時点で旅行そのものをあきらめていたのですが、突然ユカちゃんが私の手を引いて歩き出しました。チケットの払い戻しが出来るかを窓口に行って確認し、バスが無理なら明日朝一番の新幹線で京都に行こう。だから今日は近くのマンガ喫茶でDVDでも見ようと、ユカちゃんが全部まとめてくれたのです。
私は、ユカちゃんはいつもふわふわとしていて頼りにならない子だとばかり思っていました。でも、違いました。ワンピースの、チョッパーみたいな子だと思いました。チョッパーのことを知らない方もいると思うので、あまりたとえはよくないのですが、別のたとえをすれば、優しい人ほど怒ると恐いというような感じだと思います。
たぶん、ふだん接するかぎりでは、ユカちゃんは単なるおバカです。タカオさんも、そう思っているかもしれません。でも、それは、ユカちゃんの全部ではありません。
だから、安心してください。この先、ユカちゃんとタカオさんの間には、いくつもの山や谷があると思いますが、ほんとうに困ったとき、ユカちゃんはきっと助けてくれます。頼れる人になります。
でも、ふわふわしているのもまたユカちゃんなので、ちゃんと見ていてあげてください。お互いに、目を離さないでください。
そして、いつまでも幸せでいてほしいと、願っています。ほんとうに、心の底から、おめでとうという言葉と、この会場に入り切らないほどの気持ちを送りたいと思います。
以上。
本当はこの文章、金魚のふんはさすがによくないということで修正したが、そちらはあまり面白くないので(ぼく的に)、最初に作成したこれをさらしておく。しかし、何やらトラブルがあったらしく、本番では結局この金魚のふんスピーチを読んだそうである。しかもその子の勘違いで、全然二次会ではなく普通の披露宴で、親族一同の前で新婦を金魚のふん呼ばわりしてしまったそうである。もう死にそうだと言っていたが、ちゃんと生きているだろうか。
何がなんだかよくわからんが憐れではある。でもまあ、ご愛嬌ということでいいのではないでしょうか。それにしても、結婚式、か(遠い目および哀愁)。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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