facebookにあるif、もしも。

  2015/07/03

記憶とはあまりにもかけ離れた顔。しかしよくよく思い返せば、こんな顔だったなと思う。

facebookをやっていると、知り合いではありませんかと、ちょくちょく問いかけられる。しかしたいていは知らない人である。共通の友人がいるらしいが、友達の友達が友達だとは、限らない。

六次の隔たりという考え方がある。自分の知り合いを6人以上たどっていくと、世界中の人々と間接的に知り合いになれる、というものである。

まあ、それはそうなのかもしれない。しかし、そもそも間接と直接の差は大きい。知り合いは知り合いであって、友達ではないと、ぼくは思う。

記憶とはあまりにもかけ離れた顔は、5、6年前にすこしだけ好きだった人である。

知り合い候補として現れたその人は、子供を抱きかかえ、旦那とともに笑っていた。

そうか、子供が生まれたのかと思った。旦那はこんな顔なのかと思った。

人間のまっとうな好奇心で、他にもアップされている、数枚の写真も見てみた。なにはともあれ幸せそうではあるが、彼女が幸せだろうが不幸だろうが、ぼくの知ったことではない。仮に死んでいたって「ふうん」で終わりである。人間関係、ことに知り合いのような薄っぺらい人間関係なんてそんなものだろうと、ぼくは思っている。

そんな嫌な考え方はともかく、ぼくの関心はただただその容姿である。つくづく、こんな顔だったのかと思う。

お世辞にもかわいいとは言えない。不器量だなあと思う。しかしいつかのぼくは、ゾッコンではないが、彼女のことが好きだったんだよなあと思う。いや、あくまでもすこしだけ。

もしも、何かの縁やタイミングが合っていれば、あるいはそこで笑っている旦那はぼくだったのかもしれないなあ、なんて思う。思ってみる。

それはもはや永遠にあり得ないifではあるのだが、ぼくの想像力を刺激するifではある。

facebookというものがなかったら、見なかっただろう、知らなかっただろうたくさんのことがある。

その多くは取るに足りないどうでもいいことではあるのだが、ぼくやあなたがなにげなくアップした写真や文章が、自分の思いもかけないどこかで、ひっそりと誰かと繋がって、なんらかの影響力を及ぼしていることだけは確かだろう。

だからといって、facebookがあって良かったとも思わない。仮に明日なくなっても、別に困らない。これまで通り、両手指で収まる程度の大事な人たちをちゃんと愛して、どこからともなく流れてくる知り合いの話を聞き流し、とにかくはできる限り楽しく生きていく努力をするだけである。

まるで老人のようなことを言うが、最近は、あってもなくてもいいような、どうでもいいものやことが多すぎる気がする。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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