呑みこまれる年と月に
2018/02/16
酒を飲むようになったのはいつからだろう。
それは決して早くない。大学に入って教えられた、飲み会なる集まり。私は18歳だった。イッキの掛け声と、あんな「ただの水」を飲むだけでわき起こる歓声に、私は素直に感激したのを覚えている。だから私は、まさに水のようにがぶ飲みを演じたのだった。
当然、次の日は嘔吐にも立てないほどの二日酔いだった。もちろん生まれて初めての。ほとんど急性アルコール中毒ってやつだったんじゃないかな。
あれから18年、まるまる倍の36歳になった私にとって、酒はただの水ではなくなった。
今朝、サン=テグジュペリの「星の王子さま」を読んでいて、そこにあった「酔っぱらいの星」というくだりが、私にこの文章を書かせている。
その星には「呑み助」という酔っ払いがいて、日がな酒を飲んでいる。王子さまが、どうしてそんなに酒を飲むのかと尋ねる。それは「恥ずかしいということを忘れるため」で、何が恥ずかしいのかといえば、「酒を飲むのが恥ずかしい」のだという。
私は彼に、自分の内奥を見る。つまるところ、彼は永遠に飲み続けるしかない。
酒を単なる水だと思っていた時分の私なら、きっぱり、それを不毛と呼んだろう。
現に王子さまも、「おとなって、すごく、すごく変だ」と言っている。
その通りだと思う。私は変だ、いや、変になってしまった。でも、べつに好きこのんで大人になったわけじゃない。
どうしようもないんだ。今日もまた頼んでもいないのに日が昇りやがったし、性懲りもなく日が暮れる。変な大人は飲まなきゃしょうがないんだよ。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
- 前の記事
- 私はネイティブジャパニーズ
- 次の記事
- 誰も間違っていない