仮想通貨3.0 (マルク・カルプレス/講談社)

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あまりにも事件が多過ぎて、どうしても胡散臭さの拭えない仮想通貨。

その事件の中心にいた人物が仮想通貨の仕組みから今後の展望まで、真摯に語られているのは好感が持てる。

ただ、ひとつ気になるのは、この著者の資産とアセットクラス。実際のところ、何パーセントくらいの資産を仮想通貨で保持しているのか。できれば、保持している仮想通貨の種類まで聞いてみたい。

2009年の最初のブロックから現在まで、ビットコインのブロック数は50万個以上。過去の記録を改ざんするには、改ざんするブロックから現在までの全ブロックのハッシュ値を書き換えなければいけません。ハッシュ値の再計算には膨大な計算と時間を必要とします。その間にも新たなブロックは続々と作成されるため、改ざんが追いつくことはまずあり得ません。ブロックチェーンにつながれたチェーンを全て外して、再び戻すことは不可能に近いと言えるでしょう。連載小説を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。毎週連載される小説があったとしたら、1週間ごとに新しい物語が追加されていきます。作者の気が変わって、連載の途中で主人公の名前を「太郎」から「二郎」に変えたくなったとしましょう。しかし、すでに発表されて流通した連載小説を全て回収して書き換えることはできません。

本来ならば低いリスクを実現するためには、どこかで利便性を犠牲にしなければいけません。ビットコインにおいては、マイニングという仕組みがそれに当たります。セキュリティ性を担保するには、どうしても膨大な計算に成功したマイナーが、ブロックの責任者になるという仕組みが必要なのです。そのために発生するおよそ10分という時間は、安心料のようなものでしょう。その点、日本はそのセキュリティ性を、信用という国民性で補ってしまっています。だからこそ、次々と便利なサービスを実現することができているとも言えます。もはや日本の便利さになれてしまった私は、たまにスイカの決済で5秒かかっただけでも遅いと感じてしまうほどです。もし仮想通貨の決済を使うとして、コンビニのレジで10分も待たされたら一体どうなるのでしょうか。決済で仮想通貨を使用する選択肢は限りなくゼロになるでしょう。

緒方先生が言った印象的な言葉があります。「日本はかつて明治維新の際に、お雇い外国人を採用して、近代化を果たすためにどのような手順で遂行していったら良いか設計してもらい、限られたリソースを上手に使って目的を達成した。今、日本のIT産業は言語の問題もあり、世界のマーケットから完全に切り離され、明治維新の当時と同じ状況に陥っている。今こそお雇い外国人の力を借りなければならない。なので今回の件にめげずに、どうか引き続き日本のために力を貸してほしい」

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