うまかっちゃん礼賛

  2015/07/03

突然食べたくなるのがうまかっちゃんである。

添加物に対する忌避感から、あらゆる加工食品を遠ざけているわたくしであるが、食べたいものはしようがない。

それでもいわゆる即席ラーメンを前回食べたのは、もう何ヶ月も前な気がする。つまりHISASHIBURIである。

わざわざローマ字にしたことに深い意味はない。というかぼくが生きていることにも、あなたが生きていることにも深い意味はない。いや、そういうややこしい話は置いといて。

というわけでさっそく近くのスーパーで買ってきた。「うまかっちゃん(博多からし高菜風味)」。5個パックで298円なり。博多からし高菜"風味"というところがもう、添加物満載感が尋常ではない。しかし気にしない時は気にしない。あたい、食べます。

それはともかく帰宅。さっそくお鍋に水を張り、お湯を沸かす。その間に、冷蔵庫から適当な野菜をいくつか見繕って適当に切る。

この日は、キャベツ、しめじであった。これを別に炒める。ごま油をしき、塩コショウを少々、それからラー油も垂らす。

そうこうしているうちに鍋の水が沸騰する。ここへおもむろにうまかっちゃん博多からし高菜風味の乾麺を投入する。

この手の麺はだいたい伸びやすいと相場は決まっているので、2分とか、煮るのは短めに限る。

そしてここに例の添加物天国である粉末スープを投入する、というのは19歳までのぼくである。

大学に入って二年目のころのぼくは、世のひとり住まいの男子学生の例に漏れず、この手のラーメンは常食であった(一年目は下宿だったので朝晩のごはんがついていた。それに台所自体が無かった)。それで週5回くらいは食べていた気がする。ちなみにこの頃のぼくの冷蔵庫にはもやしと玉子以外が入っていることはまずなかった。

即席ラーメンを食べるにあたって、ひとつ悩みがあった。その日の鍋に入れた水の量で、しばしばスープが薄すぎることがあったのだ。水を計ればいいのだが、そういう性格ではない。

このことを樋口に話したところ、おまえ馬鹿だなと言われた。器の方に粉を入れて、注ぐお湯を調整すればいいだけやろ、と。

バカバカしいほどに深く納得したのをよく覚えている。そもそもぼくは、即席ラーメンとは、粉末スープを入れてから煮立てなければならないものだと思い込んでいたのだ。

目からウロコであった。それからはもう、スープが薄すぎるというようなことは無くなった。

というわけで、器に粉末スープを入れる。そこへまず麺を移し、それから適量のお湯を注ぐ、と、その前に玉子をひとつ落とす。それから玉子が半熟になるようにお湯をかけながら、全体をかきまぜる。別に炒めておいた野菜をのせる。ぱらりとゴマをふりかけて、七味もすこしかけたりして。

それから? いや、そこでテーブルに運ぶときにこぼしたとか、特にオチも何もないのだが、ふつうにできあがりである。それで、これまたふつうに食べたら終わりである。それでまあ、ふつうにおいしかったんですけど、それ以上でもそれ以下でもない日常があっただけです。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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