なんの実もない、なんの実も益もない話

  2015/07/03

最近、という曖昧で便利な言葉を使うが、最近、よく夢の中にじいさんが出てくる。

父方の祖父である。何度か書いたが、最期のころは唖となり、看護婦に肛門に指を突っ込まれて糞をかき出される日々、そして褥瘡にまみれて死んだじいさんである。

一昨日も、昨日も、出てきた。

じいさんとドライブしていた。軽自動車よりももっと小さな車で、あるいは玩具のチョロQのような車で、オープンカーだった。ぼくが運転をしていた。夜だった。なんか肌寒いねと言うと、じいさんは、ああだとかうーだとかこたえた。たぶん。

途中、車を止めて、ポッカの缶コーヒーを飲んだ。じいさんは非常なおしゃべりだったのだが、夢の中では何故だか寡黙で、相槌程度しか打たないのだった。

それから、ほとんど壁と相違ない、90度くらいの坂道を登った。登りきると、テレビゲームのようなセーブポイントがあった。じいさんを車に残してぼくは降りて、器械体操で使うマットのような質感のセーブポイントに立って、ぼくはセーブをした。と、そこで目が覚めた。しかし、何をセーブ(記録)したのかは不明である。

今日は、じいさんと、年若い女の子と三人でデートをしていた。ぼくはその女の子に好意を抱いているのだが、女の子はぼくではなくじいさんに好意を持っているようだった。ぼくはその関係性に苛立って、いやもっと、憎悪していた。とうとうぼくはぶち切れて、一人帰路に着こうとするのだが、なにがどうなったのか、三人で寿司屋に行くことになった。のれんをくぐって、着席した。それから、お手拭で顔を拭こうとしたところで、目が覚めた。

だからなんだという話なのだが、それにしても、あまりにもじいさんがよく夢に出てくる。

別に、それほどおじいちゃん子というわけでもなかったし、じいさんのことが好きで好きで仕方がなかったわけでもないし、あるいは、じいさんのことを尊敬しているわけでもない。にも関わらず、やたらと夢に見る。

それは、何か意味があるような気がするのだが、その意味がよくわからないので、朝、ぼうっと、記憶の中にあるじいさんのことを思い出してみるくらいのものである。

オカルト的な、いわゆる霊界からの、何かの知らせがあるのならば、是非とも教えてほしいのだが、夢の中のじいさんは、存命中のじいさんと同様、実のある話などというものは一切無いのであった。

生前、唯一、考えようによっては有用な話と言えば、手榴弾の投げ方の話である。「パイナップル爆弾をの、こうやって、ピンを抜くんよ。それでからのう、1、2の3で投げるんよ。」

あのじいさんは、いったいなんだったのだろうかと思う。鬼籍に入って久しいが、どうして、今でも元気にどこかで生きているような気がしてしまう。

それは、ごくありふれた日本人の死生観に過ぎないが、しかし、それでも、あのじいさんはどこかで生きている、ような気がする。

別に、好きでもないし、もう一度会いたい、もう一度話したいなどと思うわけでもないのだが、なぜだか、あのじいさんは生きていて、いや、どう考えたって死んでいるのだが、それでも、すごく、不思議なほど近くに居るような気がするのだ。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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