あなたとわたしの猥褻のはざま
2015/07/03
最近は連日キンコーズに行っておる。
本日の画像のようなものを臆面もなく印刷してもらっているのである。
自前のケント紙ロールを適宜切り出しては、USBメモリを携えてキンコーズへと向かう。
まっすぐにカウンターに歩み寄り、店員にUSBメモリを渡す。このメモリの直下に入っている「fg」というフォルダの中にaiファイルが入っているので、それをこの紙に印刷してください、というような感じで依頼する。
サイズがそれほど大きくなく、また枚数も少なければ、10分程度で刷り上がる。これでよろしいでしょうかと、本日のような画像を人目をはばかるでもなくおおっぴらに開陳してくれる(ちなみにこれは36cm×36cm)。
はい、大丈夫ですと言ってお金を支払う。このサイズであれば200円ちょっとで実に安い。そしてやはりプロの仕上がりは美しい。
それはともかく、絵のモチーフをエロネタにして最初の印刷のとき、ぼくは大いに仕上がりに満足して、ひとりの男性店員に突っ込んで尋ねた。
「今後こちらを頻繁に利用させていただこうと思うのですが、こういった図柄は猥褻には当たらないんですか? プリントできない場合というのはあるんですか?」
「いえ、明らかな猥褻物でなければ、まずプリントできないということはありません。まあ、用途にもよりますが。」
「なるほど。美術に使うんですが、大丈夫ですか。」
「そういった用途であれば大丈夫です。なんというか、この図には猥褻という感じはしませんし、大丈夫だと思います」
「ああ、はあ(半笑い)。まあ、わかりました。どうもありがとうございます。ではまた利用させていただきます」
店を出て、思わず「おまえの主観かよ!」と突っ込まずにはいられなかった。猥褻という"感じはしない"ってなんだよ。それはつまり、もしもエロ本のひとつも見たことがない童貞野郎だとしたら、ただちに猥褻物の烙印を押され、印刷拒否の憂き目にあうということも無きにしもあらずということではないか。
そう考えると、ぼくの絵は、少なくとも彼にとっては単なる猥褻物ではなく美術っぽい何かしらを感じさせられたということで、つまりは評価されたということなのかもしれない。そうだとすると、いやあ、わかってるね、君はなかなか見どころがあるよと一言くらいは褒めてあげねばならないような気もする。
しかし、それ以降、頻繁にエロネタを持ち込み続け来店を重ねているのだが、どうして、彼の姿をとんと見かけない。まさか童貞で、猥褻物に耐えかねたのかもしれない。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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