クリープハイプについて
2015/07/03
クリープハイプとは、先々月くらいにラジオから流れてきて知ったバンドである。
むやみに英語を混ぜない、素直な日本語ロックを聴くのは楽しい。しみじみいいなと思う。
さて、このバンド、曲自体もいいのだが、特に作詞が優れていると思う。
最初に聞いた、「社会の窓」という曲の中の一節。
「曲も演奏も凄く良いのになんかあの声が受け付けない
もっと普通の声で歌えばいいのにもっと普通の恋を歌えばいいのに
でもどうしてもあんな声しか出せないからあんな声で歌ってるんなら
可哀想だからもう少し我慢して聴いてあげようかなって
余計なお世話だよ」
確かに"個性的"な声なので、ああ、確かに好き嫌いはあるだろうなと思う。しかし自虐的なフレーズと歌い方が相まって、ここにはもう、ただただ安直に"シビれる"のである。
でまあ、とにかくはけっこうなファンになったので、先月末に出たアルバムをiTunesストアにて買った。
で、その中の「ラブホテル」という曲の歌詞に、またしても感じ入ってしまう。
「会ったら飲んでデキそうな軽い女に見られて
吹いたら飛んで行きそうな軽い男に言われた
何もしないから少し休もうか
夏のせい 夏のせい 夏のせいにすればいい」
ああ、なんていい歌なんだ、目の前に、こう、ありありと、ちょっと冷めた女と、あからさまなバカ男のやり取りが浮かんでくるようではないか。
ちょっと冷めた女は「わざと付き合ってヤっている」のに、バカ男は自分のテクニックでうまくヤれたと思っている、ような。
さらに続ける。
「『えっ、そんなつもりじゃなかったんだけどとか今更言われても困るよ。』とか今更言われても困るよ」
この歳になると、いろいろと思う。実際のところ、男と女がくっつくのなんて簡単至極なのだ。難しいのはむしろ別れ方である。
中学高校の時のように、「ぼ、ぼくと付き合ってください」「は、はい」とかいうやりとりで、お互いにパァ〜(ちびまる子ちゃんのパァ〜という顔を思い浮かべていただきたい)となれたのは、本当に過去の過去、過ぎ去ったいつかの思い出の中でしかない。
そうしていろいろ考えてしまうから、大人になればなるほど、付き合うことに対して慎重になる。だって、面倒なことになるから。
でもまあ、夏のせい、夏のせい、ってことにしておけば、ってなる。最後あたりにはこうも言う。
「一回位 減るもんでもないし」
センスがいい。いや、世界観が素晴らしい。というようなことを思うのはぼくだけではないらしく、ライブを見た人に言われたのがきっかけで、このボーカルの人は"尾崎世界観"という名前になったそうである。
なんか名前の響きがすげえ偉そうでこれまたいいよ。
とかなんとかで延々と褒めそやしたが、ほんとはけなしたいところもある。しかしまあ、今日はベタぼめでいいや。
広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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