羊頭狗肉のほうがいいから

  2017/08/22

た、た、た、体重が平常に戻った! 実のところ最近はもう年齢上しょうがないんだろうなと諦めモードだったのだが、いつの間にか減量しててハッピーターン。

さて、昨日は細切れの夏休みだったので絵の制作4ゲームとランニング、「ブリッジ」とかいうドキュメンタリー映画を見る。寝る。そして本日は4時に目覚ましをセットしてて一度起きたのに、二度寝してしまい5時過ぎ起床。こういう時の時計を見た瞬間のくやしさって言ったらない。もちろん自分を責める以外ないのだが、なんか自分の頭上あたり、神様っぽいけどもっとずっと下等な何者かに向かって腹を立てているところがある。まあ寝過ごしたものはしょうがないので絵の制作1ゲーム。

それはともかく、問題は映画「ブリッジ」——いちおう内容を説明すると、世界で一番自殺が多いというアメリカ西海岸のサンフランシスコ湾と太平洋が接続するゴールデンゲート海峡に架かる吊り橋のゴールデンゲートブリッジの自殺者とその家族・友人・知人などの証言でつづられたドキュメンタリー。深刻な内容にも関わらずなんだか退屈な内容であった——ではなく、映画を見ながら食べたラム肉である。ラムとは言わずもがな羊の肉で、そうなったいきさつはと言えば近所のスーパーLIFEにて40%引きとなっていたので買ってみただけなのだ。つまりほんの出来心なのだ。そしてモヤシ、キャベツ等と一緒に野菜炒めにしたのだ。変わったこと、特殊なことは一切していないんだ。いや、本音を言うと、本当の本当は焼き鳥が食べたかったんだけれど、惣菜コーナー含めスーパーを一周すると貧乏精神がむくむくと芽生えてきて、作った方が安いしヘルシーに決まっているではないかと、40%引きお買い得ラム肉に手を出してしまった次第なのである。

きっとぼくは、とにかくは肉が食べたかったんだ。で、ミソクソ一緒にしてしまいがちなぼくは、肉ならどれでも一緒、なんかよくわからんけど羊の姿形を想像しながら羊の肉でも食べてみるかと、まあ普通に悪趣味なことを思ったわけです。それでいそいそとお風呂ののち、ビールと肉野菜炒めという旨い安い早いの王道をまっしぐらに突き進んだわけなんです。

突き進んだところですね、ウェッ、とひるんでしまったんです。思わず退却してしまうのではないかというくらい。口の中に含んだ瞬間、味覚オンチのぼくがひるんでしまうくらい、なんか臭いんです。ラム肉はクセがあるとはよく言いますが、クセってあんた、そりゃあ動物の、獣の肉なんだからクセぐらいありますがなアンタ、って強気だったぼくは、しかし、ウェッ、ウッ、しかし、いや、大丈夫、う、うまい、たぶん、ビールで流し込もう、う、うまいよな? ウェッ、グビグビ、ウッ、しかし大盛り作ってしまったからには、ウェッ、グビグビ、ウッ、負けてなるものか、お、お野菜の方も食べよう、げ、ゲェッ、こっちもラム肉とおんなじ味と臭いになって、ウェッ、るッ。

ラム肉を生まれて初めて食べたわけでもないと思うのだが、ケチャップで炒めなおしてごまかしを試みてもみたりしたものの、降参。二日酔いだったら瞬殺で嘔吐しているであろう臭い、もう無理。これぞまさしく羊頭狗肉である。

ビーフ、ポーク、チキン、ラム、と並べてほしい。どれが一番優しそうか、甘そうか、旨そうか。アグネスラムなんて人を引き合いに出すまでもなく断トツのぶっちぎりでラムに決まっているではないか。ラム、ああラム、ぼくのラムちゃん。ラムとつぶやくだけで、そこはかとなく甘美な世界が目の前に広がるようではないか。

昨日に引き続きことわざの説明をしときますがね、羊頭狗肉とは羊の頭を掲げて犬の肉を(羊の肉だと思わせて)売ったことに由来することわざで、つまり「看板に偽りあり」ということなのである。

それを踏まえたうえでもう一度並べて考えて、いや感じてみてほしい。ビーフ、ポーク、チキン、ラム。もう名前の響きには騙されない。なんてったって実際はビーフという濁音のきいた悪役みたいなやつが一番うまいということはだな、ドッグ、これこそチャンピオンで旨いはず。

確か池袋に犬鍋を出す店があるとかなんとか聞いた気がする。おれは食う、犬なら食う、羊はもう食わない。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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