入学式は契約でもあるような
最終更新: 2017/08/22
おつかれさまです。いや、自分に言っているんです。
昨日は例の入学式でした。
校長その他のあいさつでは、たびたび「これから1年半……」という言葉が出ていたのだが、なんか契約っぽいなあ、なんてことを思った。だって、少なくともこれから1年半は生きていて学校に通う、ということを前提に話しているわけで、明日死ぬともわからない人間の不確定な未来に対しての約束、というような感じがしたのである。
少々話は横道にそれるが、契約といえば神との約束、ポピュラーなところではキリスト教、そして日本人にとってもっとも身近なのは結婚式での誓いの言葉だろう。いま読んでいる本に書いてあったのだが、あの誓いの言葉はロマンチックでもなんでもない、厳然とした契約の言葉である、とあった。
というのも、あの誓いの言葉の中に「死が二人を分かつまで」というのがあるが、あれは要するに「この結婚という契約は、どちらかの死を持って終了する」ということだというのである。契約が終了すれば再婚なりなんなり自由であると。
確かになあと思う。キリストにしろイスラムにしろ、人を殺すな蹄の分かれた動物だけを食え云々などは神との契約から始まっているのである。だからなんにつけても厳密に契約をするのが欧米、というか日本以外の社会なのだ(世界の中で日本は契約がヘタだということは常識である。携帯電話の契約にしろ、家の賃貸契約にしろ、あんなに薄っぺらい契約書なのは日本だけだという。欧米の場合はあらゆる場合を想定して、辞書のように分厚い契約書を交わす)。
そもそも「〜良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も〜」というのにしたって、この人を伴侶としたからには、いいときも悪いときも、金があるときも無いときも、病気でも元気でも、相手を捨てることはできませんよ、ということなのである。
なるほどなるほど百回くらいうなづいてしまった。それと比較して神道での結婚式の場合の祝詞も紹介してあったのだが、くらべてみると、ああ、結婚式は神道方式のほうが趣があっていいなあと思ったり。
それはともかく、入学式での挨拶である。十分に緊張したけれども、どうにかつまづいたり噛んだりもせずに話すことができた。若干わたしの身体全体がぷるぷる震えていたような気もするのだが、担任の先生からは堂々としててよかったですとお褒めの言葉をいただき感無量。
それにしてもとてもいい経験をさせてもらったなあと思う。文面にずっと目を落とすのではなく、ちゃんと合間合間に聴衆のほうに目線をやることもできたりして、意外にできるもんだなあとも思った。
全部で60〜70人くらいの場だったと思うのだが、あれができたなら、1万人とかでもたいして変わらない気がする。将来、文化功労章などもらった時のコメントもこれで大丈夫だ、たぶん。
では話した内容を赤裸々にさらしておきます。
【歓迎の詞(ことば)】
新入生の皆さん入学おめでとうございます。
在校生一同心から歓迎申し上げます。
明日から始まる学校生活は、これからの人生を調理の専門家として歩んでゆく、はじめの一歩です。
まずはその大きな一歩を、共に喜びたいと思います。
しかし今は、希望よりも不安の方が大きいかもしれません。昼間は仕事をし、夜は学校に駆け付け勉学に励むという忙しく厳しい生活にとって、一年半という期間は決して短くはありません。
ただ、これだけは自信を持って言えます。みなさんは一人ではありません。公私を問わず親身になってサポートしてくれる、最高の技術を持った素晴らしい先生方がいます。それに私たち、先輩もいます。同じスタートを切る、同級生もいます。そして何より、調理の道を志し、入学を決断した、皆さんの大きな夢が一緒にいます。
ぜひ、いまの気持ちを忘れず、わたしたちと一緒に夢に向かって邁進していきましょう。そして、一日も早く学校生活に慣れ、多くの友人を作り、多くを学び、実り多い学校生活を送られることを願っております。
簡単ではありますが、在校生を代表して歓迎の詞にかえさせて頂きます。
平成二十四年十月三日
新宿調理師専門学校
在校生代表
夜間部第93回生 新宅睦仁
以上。
擬人法を使ってしまいました。結局人間はひとりぼっちだから自分の夢と生きていきなさいと言っているような気がしなくもない。
とりあえず今週一番の仕事が終わってほっと一息。ちょっとゆっくりしよう。っていうか、さっそく今日は寝坊して6時半起床で何にもやってません。

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。
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