わたくしの説明書

  2015/07/03

最近、毎日がどうも愉快でない。不愉快というわけでもないが、あまりおもしろい気分になれない。

たぶん、というか絶対、東京と広島のはざまで心がふわふわと心がさまよってしまっているからである。

まあ、それは仕方がない。それもまた人生である。

というわけで、というわけでというわけでもないが、先日、飲み会をした。

樋口くんとぼく、他二名で、である。

ひとりを除きほぼ全員が一度は会ったことがある、はずなのだが、樋口くんの記憶には残っていなかった。

というのも、その人に前回会ったのは2008年4月11日(金)〜4月17日(木)に表参道でやった「くたばれ東京藝大」展以来なのである。ふつうに5年くらい前である。

5年前のことなんてほとんど覚えていないのが人間である。ぼくとしても、その頃に出会った人のことなどほとんど覚えてはいない。いや、けっこう覚えている気もする。

それはともかく、こういう飲み会のとき、樋口くんは決まってぼくの説明をする。

必ず言うのは次の二点である。「こいつすぐにおまえって言うんですけど、悪気があるわけじゃないけん気にせんでね」および「でもほんとはいい奴なんですよ」である。

いままでぼくは、何度このセリフを横で聞いてきたかわからない。そして決まってぼくはそう言われている間中、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている(はずである)。

毎回、うむうむニヤニヤする。自分のことを説明されるのは、どうしようもなく快感なのである。それはきっと、理解されているという快感だろうと思う。

それから、たいてい褒めてくれる。「こいつめちゃくちゃ本読んでて博学なんすよ」とか「毎日おじいちゃんみたいな時間に起きて絵描いてる」など、など。

これまたうむうむその通りと思いながら、ニヤニヤして聞いている。そうしてあおる酒は実に旨い。何物にも代えがたい味である。

いつか、話したことがある。おれの説明書を作ってくれたらいいのになあと。そうしたら、初対面でも、さっと目を通してもらって、ぼくのことを好きか嫌いか簡単に判断してもらえるからと。

しかし実際は、そんな説明書などなくとも、初対面の時に一気に自らのすべてをあけすけに話してきたぼくではある。

なぜなら、後々になって「そんな人だとは思わなかった」なんて言われたら、まったくの時間の無駄だと思うからである。

もちろん好いてくれるに越したことはないが、嫌われるのもまた一興。一向にかまわないと思う。

だって、人間なんてそんなもんだろう。すべての人と合うようになんてできてないでしょう。

なんて日夜しこしこと書き連ねているこのブログこそ、相当に精度の高いぼくの説明書に違いない。というわけで、ぼくと結婚せんとする人には、まずはこのブログを熟読のうえ、熟考していただこうと思っている。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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