出会いと別れのくりかえし

  2017/08/22

昨日、ひさしぶりに会った友人――ここでは仮にYさんとする――が離婚することになったという。

この一年ほど話し合ってきて、出した結論らしい。

ぼくは何度かYさん夫婦に会ったことがある。ぼくの目から見ると、彼らはいわゆるおしどり夫婦のように見えた。

世の中にはうまが合い、縁があり、そして結びつく相手がいる。彼らは、そういう神とか仏とか見えない力的な何かを、漠然と感じさせてくれる雰囲気を持っていた。

それが、離婚することになったという。

理由はここでは特に問題ではない。なぜなら男と女の間には、たとえどんなにくだらない男女間においても、到底他人には理解しようのないものが横たわっているものだからだ。

それは男女の繋がりにおける宿命と呼べるものかもしれない。だから、それを根掘り葉掘り聞いたところでたいした意味はない。問題は、そういう選択をしたということだ。

最近、というかこの元旦に、親友である樋口が入籍をした。それで、その対比で、よけいに人間の下す選択というものを考えさせられてしまう。

明と暗なんていう、安直な一般的イメージで考えるのは容易い。しかし、幸か不幸か、正義か悪か、そんなことは誰にもわからない。人生は万事塞翁が馬とはよく言ったものである。

極めて身近な人物ということもあり、痛いほど肌で感じられるのだが、結婚という、一般的には幸福なイメージとして考えられる選択をした樋口にしたって、決して迷いがなかったわけではない。

いろいろなことを考え、思い悩んだ末の選択に違いないのだ。それはきっと、Yさんにしたって同じことで、話し合いを重ね、考えに考えた末の結論であろう。

どんな選択にしろ、結論を出し、具体的な行動、つまり結果を出したということに、ぼくは最大限の敬意を払いたい。

彼らを、ぼくは賢明だと思う。そもそも未来など不透明きわまりないのである。良いこともあれば、悪いこともある。極論すれば、どんな選択をしたところで「人生なんてたいして変わらない」のである。

少なくともぼくは、人生とはそういうものだと思っている、というか、そのように諦めている。

しかし、多くの人にとって、選択には並々ならぬ勇気がいる。樋口やYさんのように、月並みな馬鹿でなければなおさらである。なぜなら、その選択の結果のすべてを甘んじて受け入れなければならないことを理解したうえでの選択となるだろうからだ。それ故に、ぼくは彼らに最大限の敬意を払いたい。

反対に、色々あるのだとお茶を濁し、結論を出さず、行動もせず、人生は複雑だとかなんだと、自身の空虚さを見せかけの達観的雰囲気で偽装し、人生を悟ったようなふりをして、苦み走った顔で安っぽい哀愁をかもし出し、時間を空費して年老いてゆくような輩を、ぼくは心底軽蔑する。

人生は、言うまでもなく選択の連続である。選択こそが人生なのだ。どんなに困難な苦渋の選択でも、選択しなければならない。仮に選択しないとすれば、それは人生を放棄することだとさえ思う。

樋口とYさんに、この先、どんなことが待ち受けているのかは知る由もないが、とにかくは選択を下したことについて、ぼくは手放しで賛辞と、そして祝福を送りたい。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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