変わらない何かの有り得なさ

  2017/08/22

前も書いた気がするけど、やたらと一日がかけがえのないものに思える今日この頃。

ルーチンではなく、今日しかない今日を生きよう、なんて、安っぽいJPOPの歌詞みたいなことを大真面目に思う。

馬鹿みたいな話だが、ときどき不思議になることがある。

昨日のこととか、先週のこととかを思い出す。それはごく最近の出来事なので、細部に至るまで鮮明に覚えていて、頭の中で正確になぞることができる。

しかし、いくら鮮明になぞれたところで、もうその時は二度とはない。当たり前である。だけど、こんなにありありと覚えているのに、もう戻ることができないのだと思うと、素直に不思議なのだ。たった一秒前にさえ、一秒後のぼくはもう二度と、永久にその”時”に触れることはできない。

そういう”二度とは無い時間”という意味では、一秒前も、10年前も同じである。しかし人間は、往々にして一秒などという微小な変化を見逃してしまう。たとえば1年とかいう、1秒を31,536,000ほど集積した時を経て初めて、なんらかの変化を知る。いや、気づく。

閑話休題。

「生物にとって時間とは何か (角川ソフィア文庫)池田 清彦」という本を読んでいる。小難しい内容が延々と続き、1割程度しか理解できていないのだが、その中に、「同一性」というキーワードが出てきた。

何をもって私を私とするのかというような話である。たとえば、人間の血液は100~120日で全てが入れ替わる。燃した時に残る骨でさえ、2年半で入れ替わる。一部ではない。すべて入れ替わるのである。

繰り返すが、”全て入れ替わる”のである。つまり、まったく別物になっているということだ。ラーメン屋で言うなら、「次郎」というラーメン屋が「三郎」というラーメン屋に入れ替わったようなものである。それを誰がもともとの「次郎」と呼び続けられるというのだろう(ちょっと違うか)。

それはともかく、しかし、それでも、私は私である、という。

何が私で、何があなたなのか、その同一性を規定するのは何なのか。

これもまた当たり前といえば当たり前なのだが、考えれば考えるほど、素直に不思議である。まあ、こうして生きていること自体が、まったく摩訶不思議である。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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