熱中症にご注意ください

  2017/08/22

"?"と思われた方も多かろうが、わたしは正気である。ええ、「熱中症にご注意ください」。ペコリ。

以上で終わってもいいのだが、せっかくなのでもう少し、いや、だいぶ書いてみる。

神保町にあるお気に入りの立ち食いソバ屋(天ぷらがよいから)の店内で、ラジオで聴いたんだ。おれの母ちゃんが言ってた、やっぱ友達、んだ、んだ、ダ、ダ!って、ちょっとJラップしてみた。

それはさておき熱中症。熱中症の4割は夜間に起こるそうである。そして室内。

そばをずるずるしながらへぇ〜と思った、思うよね? 熱中症=炎天下というイメージしかないわたしとしては、そういうもんなのかと、目から安っぽいウロコである。

ちなみに昨日の公衆衛生学の授業でも熱中症のことを言っていたのだが、なぜか先生は最近あったらしい自身の熱中症体験をざっくばらんに繰り広げていた。初期症状は「異常なのどの渇き」と「筋肉のつり(痙攣?)」だそうである。予防にはとにかくこまめな水分補給。ダカラとかアクエリアスとか電解質を含んだ飲料を飲みなさいとも。

先生ではなくラジオは言っていた。温度計を設置して、28度を超えたらクーラーをつけなさい、と。

そんなばかな、いちいち温度計なんか見らんでも暑かったらクーラー付けますわなどと言うことなかれ。身近に老人が居る方はよくよくご存じであろうが、老人はクーラーをつけないのである。そしてクーラーをつけないことを"美徳"だと思っているのである。

ラジオでは、街頭で老人にクーラーについてのインタビューを行っていた。ぼくはずるずるずる。

九十六歳でふ。わたひゃあね、昔の人間でふからね、クーラーは付けません。冷えまふから身体に毒でふはらほろひれはれ。

以下、似たような発言を繰り広げるご老人が数名、口々にクーラー不要論を唱えてくださった。

まあ、暑くないしクーラーが要らないってのならどうぞご勝手になさればいいのではあるが、熱中症に倒れる老人は非常に多いし、死ぬ人も多いのである。しかしなぜ老人は文字通り"死んでも"クーラーをつけないのかと言えば、感受性が鈍ってしまっていることが原因だそうである。

歳を取るといろんな感覚が衰えていくのだが、暑さ寒さを感じる感覚もまた、しっかりと衰えていくのである。

なるほどまったく納得である。くそ暑い中でも、なぜか年寄りは平然としていることが多い。何年か前にあったぼくの叔父さんの葬式のとき、真夏のクーラーのない座敷での長々とした念仏の時など、若者は総じて皆辛そうであったのに、年寄り連中はまさか道連れに天に召されたかと思うほど正座で微動だにしないのであった。

そういうわけで、老人の「暑いなあ」は我々の「暑くて死にそう」であり、老人の「暑くて死にそう」は我々の「暑くて死んだ(ご臨終)」なのである。

だから老人にもっとクーラーを。そして水分をしっかり。死んじゃうから。

ラジオでは読者投稿もあった。姑と同居している主婦からの投稿で、「姑は頑なにクーラーを嫌がります。そして水分補給も「トイレに行く回数が増えて億劫だから」と言ってほとんど取ろうとしません。わたしがいくらクーラーや水分補給を勧めても聞く耳を持ちません。しかしこの頑固な姑を、熱中症にならないよう、まずは温度計を設置してどうにかがんばりたいと思います」

歳老いて感覚が鈍くなるのは仕方ないとしても、人の進言に耳を傾けられる程度には心はしなやかで居たいものである。老いては子に従えとは、なんと心優しいことわざではありませんか。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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