予想は現実の前で塵に同じ

  2015/07/03

先のことをあれこれと考えてみるが、考えてもしょうがないことばかりである。

自分に影響を及ぼす要素や、可能性と現実、未来と展望、変化と対応、その他もろもろ。

しかし結局のところは、別に世界で何が起ころうがどう転ぼうが構わないので、自分の都合のいいように、自分の望むようなことが起こればいいと考えているだけなのだと思う。

たとえば、なにかでエッセイを連載している画家となり、愛する人と結婚をする。

とりあえずそれが現実になれば、ぼくの人生はとりあえず完成であり完璧だろうと思う。望みが手に入れば、頂上に行けばあとは下るだけだが、それでもそんな未来を望む。

今朝読んでいた本に、こんな言葉があった。

"人生には二つの悲劇がある。愛する人を失うことと、愛する人を得ることである。" 

オスカー・ワイルド

まあ、人生はそんなもんだよなと思う。しかし得られていないうちは、文字通り七転八倒するのが人間というもので、にも関わらず、愛する人を得て有頂天になるのもつかの間で、いつか冷めた日には、なぜあんなにも恋焦がれ苦しんでいたのだろうかと、おれも若かったなんて、けろっとした顔でうそぶくのだ。

確かに未来が予想できたらいい。実際に望む状態が訪れたときの自分、心の変化、出来事、ハプニング、そういうすべての変化、そこからくる結果。それらを余さず知りたいと思う。

もう一つ引用を。今日の毎日新聞のコラムは、なんだか妙に深い含蓄を感じて興味深かった。

"コンピューターによる天気の予測は1950年、世界初の電子式汎用(はんよう)コンピューターENIACで初めて行われた。水平分解能は700キロと粗く、わずか19×16個の点で北米をカバーするものだった。24時間先の天気を予測する計算に24時間かかったという(同じ計算を2006年当時のパソコンで行うと30ミリ秒で終了したそうだ)。"

24時間先のことを知るのに24時間かかる。なんだか落語にもなりそうな話である。

勝手に含蓄を見出し意味をこじつけるが、予想というものの本質を感じる。いくら予想をしても、どんなに精度高く予想してみても、圧倒的な揺るぎない現実がすべてである。降水確率が0%でも雨が降れば降水確率100%でしかないのであって、予想が裏切られたもなにも、いつでも現実という独裁者は予想という民主主義者にべったりと泥を塗りつけ踏みつけて飄々としている。

予想をするのは勝手だ。夢も希望も、あるいは現実と失望も含めて、予想をするのは勝手であって、予想についての対策をするのもまた勝手だ。しかし、なにをどうがんばったって現実がすべてである。すべてであるからして、往々にして現実はつらいのである。

新宅 睦仁/シンタクトモニの作家画像

広島→福岡→東京→シンガポール→ロサンゼルス→現在オランダ在住の現代美術家。 美大と調理師専門学校に学んだ経験から食をテーマに作品を制作。無類の居酒屋好き。

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